パレスチナ情勢は、パウエル米国務長官のシャロンとの会談で当面の大きなヤマを迎えたが、ここへきてブッシュの「対テロ包囲網戦略」が穴だらけだったことが露呈し、米政権は戦略の練り直しを迫られているようだ。
アフガンでの米軍の直接戦闘(地上戦)を回避し、北部同盟に”代行”させたため、オマル、オサマを始め、アルカイダ、タリバンともかなりの兵力を国外に脱出させたり、一般のパシュトゥーン人に”溶解”させてしまった。そこで地上戦に自軍を当に雄したものの、「アナコンダ作戦」のように、捕虜は出るは、ゲリラ戦に翻弄されるは、でベトナム戦争の悪夢が蘇り、あっという間に腰砕け。
一方、「この遺恨、晴らさでおくものか」と5月の開戦に向け準備をしていた対イラク戦も、アラブ首脳会議ででシリアが主導権を取ってイラク・イラン・シリアの「統一戦線」ができてしまった。しかも、「テロ撲滅」をスローガンに、シャロンは米国など無視する形でパレスチナで暴れまくるばかり。
湾岸戦争の時にフセインが必死で仕掛けようとしたものの、ほとんど不発に終わった「湾岸戦争・パレスティナ問題リンケージ」が、今回は対イラク戦が始まる前からできている。対テロ包囲網は穴だらけ、で、イスラエルには、逆手に取られて「パレスチナ自治政府」を叩き潰す絶好の口実に使われるザマ。ダブヤの支持率も70%台にダウンしている。
恐らく、ダブヤ一派は、アフガンでの北部同盟のように、イスラエルを尖兵に使って、ハマス、ヒズボラ叩きを口実に、レバノン、シリアに攻め込ませ、非対称戦争を中東戦争に様変わりさせ、イラクを叩く戦略を取ろう、とするだろう。しかし、こうなると、「反テロ包囲網」でも何でもなくなる。ダブヤ一派にそこまでの度胸があるかどうか。
ついでに言うと、石油戦略では、米国が一番、頭を悩ませているのは、独自の石油価格政策、増減産政策を貫き、米国の言うことを聞かないイラン。だから、大規模な中東軍事政策をダブヤ一派が展開する場合は、対イラン戦略も必ず織り込む筈だ。ライスやラムズフェルド、アーミテージやウォルフォビッツが政策決定から遠ざけられる可能性も出てきた。