【エルサレム11日=平野真一】
パレスチナ自治区に対する大規模な侵攻作戦「守りの壁」を展開しているイスラエル軍は11日未明(日本時間同日午前)、新たにヨルダン川西岸ラマッラ北郊の自治区ビルゼイト町に侵攻した。
米・露・欧州連合(EU)・国連の4者が10日、即時撤退を求めるなど、国際社会の対イスラエル圧力が急速に高まっているが、新たな侵攻はイスラエルがあくまで「テロ掃討」完遂を目指す姿勢を改めて示したものと言える。11日午後にエルサレム入りするパウエル米国務長官の停戦調停にも重大な影響を及ぼそう。
現地報道によると、イスラエル軍戦車部隊が町中心部に進駐すると同時に、精鋭歩兵部隊が展開。パレスチナ自治政府の庁舎を占拠し、テロ容疑者を求めてしらみつぶしの家宅捜索を開始した。ビルゼイト大学も戦車で包囲した。パレスチナ人の抵抗はまったくなかったという。
ビルゼイトは、西岸の商業中心都市ラマッラ北方約7キロに位置する大学町。住民はパレスチナ少数派のキリスト教徒が中心だが、学生にはイスラム原理主義組織ハマスなど武闘派の支持者も多いとされる。
イスラエルでは10日朝、北部ハイファ近郊を走行中の路線バス内で自爆テロが起き、乗客8人が死亡、ハマス武装部門「カッサム隊」が犯行声明を出した。
同日、西岸北部ジェニンを視察したシャロン・イスラエル首相は、侵攻作戦を「我々の生存をかけた戦い」と強調し、「米国は(撤退)圧力をかけるべきでない」と、作戦継続の意思を改めて表明していた。
イスラエル軍はビルゼイト侵攻に先立つ10日夜、ジェニン近郊のカバティヤ、西岸南部ヘブロン近郊のヤッタ、サモアの計3か村から撤退を開始したと発表したが、いずれも作戦終了に伴う措置としている。
パウエル長官は11日、ヨルダンでアブドラ国王と会談した後、エルサレム入り。12日にシャロン首相、13日にアラファト・パレスチナ自治政府議長とそれぞれ会談し、イスラエル軍の侵攻停止と撤退、一昨年秋から続くイスラエル・パレスチナ武力衝突の停止を目指して調停に着手する。だが、イスラエルが停戦よりテロ掃討を優先する姿勢を改めて鮮明にしたことで、早期侵攻停止の展望は遠のきそうだ。
イスラエル軍は10日、西岸南部ドゥラで「カッサム隊」地区責任者を殺害するなど、この日少なくともパレスチナ人4人を死亡させた。
(4月11日11:57)