【ワシントン布施広】
シャロン・イスラエル首相は10日、米FOXテレビとの会見で、シリアとレバノンがイスラム武装組織ヒズボラによる対イスラエル攻撃を抑止しない場合は、両国に対して「極めて厳しい行動」を取ると述べ、イスラエルの軍事行動を近隣アラブ諸国に拡大することも辞さない意向を表明した。またアラファト・パレスチナ自治政府議長を「テロの帝国」の中心人物と呼び、議長との交渉はあり得ないことを強調した。
パウエル米国務長官のイスラエル訪問に先立つ会見で、シャロン首相はレバノン南部からのヒズボラの攻撃について、チェイニー米副大統領を通じてシリアに「メッセージ」を伝えたことを明らかにした。副大統領は9日、アサド・シリア大統領との電話で、イスラエルの意向を伝えたが、シャロン首相によると「今のところ何の変化も見られない」という。
首相は「チェイニー副大統領には、ヒズボラの砲撃が続けば、イスラエルはシリアとレバノンに対し、極めて厳しい行動を取らざるを得ないと言ってある。メッセージは極めて明確だ」と語った。首相と副大統領が話した日は明らかでないが、ブッシュ大統領は4日の声明で、シリアなどの国々に「引っ込んでいろ」と警告している。
シャロン首相はイスラエルのレバノン侵攻(82年)時の国防相。レバノンは隣国シリアの強い影響下にあり、親イラン組織のヒズボラの動きも、シリアの意向に左右されるとの見方が強い。首相の発言は、レバノンへの大規模な再侵攻や、同国内のシリア軍基地の空爆などを意図したものとみられる。
一方、シャロン首相はアラファト議長が「世界中のテロの背後にいる」と述べ、「テロリストとは交渉しない」というブッシュ大統領の言葉を踏まえて、議長との交渉はあり得ないと強調。「アラファトは平和を望んでいない。PLO(パレスチナ解放機構)はテロの帝国だ」と強く非難した。