イスラエル軍の侵攻が続くパレスチナで平和を訴えるデモの最中、同軍の発砲で足に負傷した日本人学生、清末愛砂(きよすえあいさ)さん(30)が3日(日本時間3日夜)、毎日新聞の電話インタビューに応じ、銃撃時の生々しい恐怖などを語った。インタビュー直後、清末さんは軍の制圧下にあるベツレヘムのホテルを他の外国人とともに米国の車で脱出したが、街では依然多数のパレスチナ人が軍に包囲されている。「もう何人殺されたか分からない。そこに行って何かしたいのに」と悔しさに声を震わせた。
東京都出身の清末さんは大阪大大学院生で、英国の大学に留学中。パレスチナ難民への支援などをしているNGO(非政府組織)「国際連帯運動」のメンバーとして、3月28日にベツレヘム入りした。
イスラエル軍の攻撃が強まった今月1日、清末さんを含む約70人のメンバーはベツレヘムの北にあるベイトジャラの難民キャンプを目指してデモ行進中、軍の装甲車と遭遇。メンバーは両手を挙げ、抵抗の意思がないことを示したが、その途端に銃撃が始まった。
3発目の銃声と共に右太ももに激痛が走り、白い靴下がみるみるうちに真っ赤に染まった。近くの病院に駆け込み、銃弾の破片が食い込んでいることが分かったが、パレスチナ人医師は「取らなくても大丈夫。ここではみんな入れっぱなしだ」と応急処置にとどめた。
3日まで滞在したホテルでも、窓には常に銃口が向けられ、カーテンも開けられなかった。イスラエル軍が建物の給水タンクを壊し、電線を切断したため、トイレの水も流せない。街路には兵士がひしめき、食料の調達もできない。近くの民家では、子供たちが両親の遺体と共に閉じ込められているという。
負傷する前にも、ホテル前の建物が被弾した。恐怖に泣き出す清末さんに、隣にいたパレスチナ人男性は「これが僕らの日常なんだ」と吐き捨てるように言った。難民キャンプで出会った子供に将来の夢を尋ねると「将来? そんなものないよ」という答えが返ってきた。
一方で、笑顔でコーヒーを振る舞ってくれた家族もいた。道行く子供たちの明るい表情に救われた時もある。「あの子たちが希望を持てる世界を築きたい」。平和をおう歌する日本に無事帰り着いたら、清末さんは多くの人にパレスチナの現実を報告したいと考えている。 【鈴木英生】(毎日新聞)
[4月4日10時50分更新]