前号で「アラファトが暗殺されることがイスラエルとアメリカにとって国益になる」と述べましたら、質問が殺到しました。本号で解説したいと思います。
アメリカのジニ特使がイスラエルに自重を求め、イスラエルはヨルダン西岸から軍隊を引き揚げました。そして3月27日にはアラブ首脳会議が開かれ、サウジアラビア皇太子の和平案が検討されることになり、世界の世論は中東和平に期待を寄せていた、ちょうどその頃、イスラエルのネタニア市のパークホテルでは「ヘブライの出エジプト」の記念晩餐会が開かれていました。突然満員のダイニングルームにパレスチナ反主流派ハマス(テロ組織)のアブデル・オデ(25)が飛び込んできて自爆をはかったのです。一瞬にしてユダヤ人22名の命が奪われ、120名以上の重軽傷者を出す大惨事。これが(表向き)和平を求めるアメリカとサウジに対するパレスチナ側の回答。事件を知ったブッシュ米大統領は今までにない強い語調でアラファトを非難し、あらゆる手段に訴えてテロ防止を保障するよう求めました。アラブ首脳会議の結果は(前号で述べた通り)「和平の望みを断ち切る」結果に終わってしまいました。アラファトもムバラク(エジプト大統領)も出席しないサミットなど意味は無く、出席した首脳達の一部が会議をボイコットするかと思えば、パレスチナ過激派(ハマス等)の自爆戦術の支持声明を求める者まで出る始末。世界に中東和平ムードのメッセージを送るどころか「世界に中東和平の希望を失わせる」結果に終わってしまいました。
今後、アメリカはイスラエルと共にアラファトにテロの即時停止合意を強く求めるでしょう。4日に3回の割合で繰り返される残忍なパレスチナ自爆テロにも拘らず、世界の世論はまだイスラエルにアラファト釈放とイスラエル軍のパレスチナ都市からの撤退を求めています。アラファトのアラブ首脳会議出席の許可条件としてイスラエルは「無条件テロ停止合意」を求めていましたが、アラファトは拒否。一方的テロ停止は出来なかったのです。アラファトは今や完全にイスラエルの監禁状態下にあり、イスラエルは釈放の条件として、執拗にテロ即時停止を求めるでしょう。繰り返される自爆テロに対するアメリカの強烈な圧力の為、アラファトはもうこれ以上テロ停止拒否を続けることが難くなります。実はアラファトのテロ停止合意はアメリカとイスラエルにとって「パレスチナ自治機構を粉砕するための戦争カード」だったのです。今のアラファトにはリーダーシップも統治能力も無く、テロ組織ハマス等反主流派テロ組織が主導権を握っているので、アラファトがテロ即時停止合意をしてもテロは必ず続行されます。そこで初めて世界の世論はイスラエルの軍事行動とアメリカのイスラエル軍事支援を認めることになります。アラファトの身の安全はイスラエルの監禁下では保障されますが、釈放されるとハマス等の手下に殺害されるでしょう。テロ続行、イスラエルのパレスチナ猛攻でパレスチナ自治の夢は消えるでしょう。そこでイラクのサダム・フセインのご登場となります。総てはアメリカの作戦通りです。やはりアメリカはスゴイ!
http://www.luvnet.com/~sunraworld2/jiji-chokugen/jiji_155.htm