政府が今国会への法案提出を目指す有事法制について、現行法令の見直し検討の中で、民間人への罰則規定が盛り込まれていることがわかった。日本が攻撃されるなどの有事に、自衛隊の作戦行動をいかに円滑に進めるかを検討する作業で、物資の保管命令に従わない民間人に懲役を含む罰則を提示している。検討内容は、防衛庁と各省庁が協議してきたものをまとめた。首相官邸や防衛庁内にも罰則規定に慎重論があり、今後、議論を呼びそうだ。
政府が今国会への法案提出を目指す有事法制について、防衛庁や各省庁所管の現行法令をどう見直すかなどを検討した内容が明らかになった。法案化のもとになるもので、日本が攻撃されるなどの事態を想定し、自衛隊の作戦行動をいかに円滑に進めるかを検討している。自衛隊法で規定された命令に従わなかった民間人への罰則規定や陣地構築のためには保安林でも許可なく伐採を可能とすることなど、具体的に踏み込んだ内容だ。検討内容は、防衛庁と各省庁が協議してきたものを防衛庁がまとめた。今後、官邸での議論を経て法案化される見込みだ。
防衛庁による有事法制の研究は77年から始まり、84年までにその内容が公表されている。防衛庁所管法令に関する問題点を「第1分類」、他省庁所管分を「第2分類」、所管が明確でないものを「第3分類」とした。
今回の検討内容は1、2分類を整理する形で見直したもの。法案化に向けた前段の作業で、日本が攻撃され、自衛隊への「防衛出動」発令を想定し、自衛隊の活動を円滑にするための項目が100以上に及んでいる。
現行の自衛隊法では、防衛庁長官らの要請で、知事が必要な関係者に業務従事命令を出すことができる。今回の検討では、その対象に医師ら医療従事者のほか、土木技術者や空港港湾の運送従事者らを含んでいる。
また、同法の規定では、自衛隊の作戦行動に必要な食料や燃料などの物資を保管するよう業者に命令できる。検討内容には、従わなかった場合、災害救助法に準じて6カ月以下の懲役か30万円以下の罰金を科すようにしている。物資確保に実効性をもたせるための措置のようだ。
戦時には自衛官が弾薬など大量の火薬類を所持したり、輸送車に積み込んだりして民間フェリーに乗船することがあるが、現行では禁止されているため、適用を除外するとしている。
敵の上陸に備え、海岸に船舶から物資を荷揚げする際、海岸法で定められた管理者との協議を免除し、国立公園や保安林に陣地を構築するときは、環境相や知事の許可などを経ないで伐採できるようにするとしている。(05:56)