03/10 15:17 ゛テロ渓谷″の包囲強化 チェチェン化恐れる住民 外信21
共同
冠雪を抱く山の向こうはロシア・チェチェン共和国。砂袋を積み
上げて築いた検問所から、兵士が双眼鏡を山の方角へと向ける。米
国がテロ組織が潜むとにらみ、新たな「テロとの戦い」の舞台に浮
上してきたグルジア東部パンキーシ渓谷では、警備が強化される一
方で、難民、地元住民の間で゛第二のチェチェン化″への危ぐが高
まっていた。
「誰に会うつもりだ」。渓谷をさかのぼり、ドゥイシ村の入り口
にある最後の検問所でグルジア内務省軍の兵士に取り囲まれた。こ
こから先は地元住民しか行けないという。
「テロリストなど見たことがない」と兵士たちは口をそろえる。
しかし、実戦を想定したとみられる検問所と、相当数の兵士、武器
が厳重な警戒ぶりを物語る。
「検問所ができたのは最近。それ以前は危険だった」。渓谷の一
本道でパウリさん(50)が羊を追う手を休めた。「誘拐、強盗、
麻薬取引。犯罪者が頻繁に出入りしていた」
この数年は、外国人などを狙った誘拐事件が頻発。今年二月には
渓谷の入り口にある検問所が襲われ、警官四人が誘拐される事件も
起きた。
パンキーシ渓谷には、民族的にチェチェン人と同一のキシティン
人が住む。一九九九年にチェチェン紛争が再燃後、国境を越えて約
八千人の難民が身を寄せ、渓谷の人口は倍増した。
ロシアはこの中に、テロ組織アルカイダとつながる武装勢力が混
じっているとして、「テロの温床」の根絶をグルジア側に求めてき
た。
「われわれがテロリストということか」。米軍がグルジア軍の対
テロ作戦支援を決めたことに、ドゥイシ村に住むチェチェン難民の
イーサさん(45)は憤まんやるかたない様子だ。
二年前にチェチェンの首都グロズヌイから戦火を逃れ、家族と移
住。国連などの人道支援で生活する。「アルカイダの兵士など知ら
ない。ロシアがあおっているだけだ」
同村のキシティン人、ユスプ・ハプザクさん(33)も「米国も
ロシアもばかげている。政治がつくった虚構だ」とテロリストの存
在を否定。共通するのは、テロ掃討作戦が始まれば戦場になるとの
懸念だ。
渓谷の村々を結ぶバスの中で、難民のルスラム・イスライロフさ
ん(46)は「ロシア軍による掃討作戦だけは絶対にお断りだ」と
語気を荒らげたが、「米軍ならいいという単純な問題でもない。米
国人のことは良く知らない」と複雑な心境をのぞかせた。(グルジ
ア東部パンキーシ渓谷ドゥイシ共同=有田司)
(了) 020310 1516
[2002-03-10-15:17]
03/10 15:17 グルジアへの米軍支援 外信22
ブッシュ米政権は、グルジア東部パンキーシ渓谷にテロ組織が潜
んでいるとみて、その掃討を支援するため米軍特殊部隊など200
人を派遣する方針を決定。米部隊は作戦に直接参加せず、グルジア
軍の対テロ特殊部隊の訓練と、装備供与を行うとしている。グルジ
アは軍事作戦を実行するかどうか、現段階では決定していない。(
ドゥイシ共同)
(了) 020310 1517
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