【ワシントン佐藤千矢子】
米国のブッシュ政権が、核によるテロ攻撃に備えて、首都ワシントンから離れた東海岸の地下壕に政府高官約100人を交代制で勤務させる「影の地下政府」を極秘に発足させ、運営を続けていることが1日、明らかになった。同日付ワシントン・ポスト紙が報じたのを複数の政府筋が確認し、大統領も「我々は政府の継続性を真剣に考えている」と事実上、認める発言をした。
同地下政府は「シャドー・ガバメント」(影の政府)と呼ばれる。旧ソ連による核攻撃の脅威があった冷戦時代にも同様の計画があったが、実施されたのは初めて。今回は、テロ組織アルカイダが持ち運び可能な核兵器を入手し核攻撃を行う場合を想定している。
全省庁から計75〜150人の政府当局者が選ばれ、山腹にある2カ所の地下壕のような場所に発電機、電話、パソコンなどを持ち込んで、90日交代で24時間態勢で寝泊まりしながら業務を行っている。当局者らは口外を禁じられ、家族や友人らはフリーダイヤルや切り替え電話で連絡を取るシステムになっている。
アルカイダが核兵器を入手したことを示す確かな情報はないものの、側近によれば大統領はその事態を心配しているという。地下政府は、緊急時の米国民の食料、飲料水を備蓄・供給するほか、交通、エネルギー、通信の維持などを担当する。最悪のケースとしては、ワシントンが核攻撃を受けて壊滅し、政府機能がまひした後、チェイニー副大統領が地下政府を運営するというシナリオが想定されているという。
[毎日新聞3月2日] ( 2002-03-02-11:28 )