【エルサレム岸本卓也】
イスラエル・パレスチナ衝突の収拾に向け、米国のパウエル国務長官は8日からモロッコを手始めに中東歴訪を開始したが、長官と会談したサウジアラビア皇太子やモハメド・モロッコ国王は相次いで、イスラエル寄りの姿勢を変えようとしない米国に対し、アラブの親米国ついては異例ともいえる厳しい批判を展開した。9日未明、ヨルダン川西岸の一部都市からの撤退した一方で、西岸ヘブロン近郊に侵攻したことと合わせ、アラブ・パレスチナ側の反発は衰えそうにない。
パウエル国務長官は最初の訪問地モロッコでモハメド国王とサウジアラビアのアブドラ皇太子と相次いで会談した。両会談後の会見で国務長官は「アラブ各国の政府はパレスチナ国家樹立という目的を暴力で達成できないことをパレスチナの人々に語ってほしい」と述べた。
しかし、モハメド国王は長官が米国からイスラエルに直行しなかったことを指摘、「真っ先にイスラエルに行くべきだった」と極めて冷ややかな対応を示した。国王は「イスラエル軍が自治区から撤退すれば、サウジアラビア提案の包括的中東和平案を進める用意がある」とイスラエル側の対応を見て判断する方針を長官に伝えた。
また、アブドラ皇太子は長官との会談で「イスラエルの軍事作戦はアラブにおける米国の信頼感を崩壊させている」などと批判した。また、サウジからの報道ではファハド国王が8日、パレスチナ問題について「米国はイスラエルに自治区から撤退するように要請すべき」と米国の外交努力を求めた。また、政府高官はイスラエル軍の2都市からの撤退について「完全撤退が必要だ」とクギを刺した。
パウエル国務長官は9日にエジプトに到着、ムバラク大統領と会談する。