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管見で、本当に恐縮なのですが、今回この様にXXXで、重大な転換期を迎えている“精神病”者に関する改悪・新案についての発題者としてわたしが意見を述べさせて頂けることに感謝します。
“精神病”者問題は、精神医療(精神科特例、診療報酬、入院患者全体の7割[約231000人]を占める社会的入院患者の問題などの構造的欠陥)、事件通報、強制移送制度、精神保健鑑定、措置鑑定(簡易鑑定)、検察官の起訴便宜主義、精神保健福祉問題など、多岐におよびしかも問題の重層性について語るには、枚挙に暇が有りません。本来ならばこれらの問題について、きちんと細かく紐解く必要性が重要だと思いますがこの場では、問題の一点ないし概括についてしか触れられないことが真に残念です。XXXは、精神医療受診者当事者が、よくご参集する場であり、本当はそういう精神医療ユーザー、コンシューマーの意見がこの様な場において特に反映されるべきであり、自分たちに関わる学習の場として位置付けられ熟考されるべきだと思いますが、今日お集まりのメンバー、皆様からの問題意識に基づいた忌憚無き意見の続出をお願いします。たくさん、お寄せ頂ければと思います。今法案の可否決いずれにせよ、最後まで事態を見届け、凝視する決意です。
わたしが、自身を精神障害者と呼ばず“精神病”者と言うわけは、未だ私に対する“精神病”の概念を私が総括していないこと、“精神病”者はおそらく1年365日“精神病”に関わっているわけではないから「健常」である時もあるはず――医療モデルからの脱却が出来ていないこと――の前提に立って、精神障害者という呼称は、WHOの国際障害分類による社会モデルに準拠していること、すなわち、障害とは疾病を意味するものではなく、それは病気・変調・傷害などの健康状態の変化にともなってもたらされた諸状態のことですから、わたしの場合“精神病”の概念把握が不出来なのでそれを前提に、社会モデルの障害用語を使用することは慎むべきだと考えています。ちなみに、WHO「障害の3つの次元」=impairments(機能障害)、activities(活動性)、participation(参加)。
C.背景:今年からの動き
法務省・厚生労働省は、今冬(2001)1月29日(月)よりほぼ月一回のペースで精神障害に起因する犯罪予防、また再犯予防、重大な犯罪を犯した精神障害者に対する「適切な」福祉的医療的制度の拡充などを目的に、法務省・厚生労働省合同検討会を開催して来た。この会議は、実はその陰にはある有名な元某大手新聞社の論説委員が関与していると言われている。主なメンバ―は、官僚、東京医科歯科大学犯罪精神心理学山上皓教授(一貫して保安処分推進派、厚生科学研究「触法行為を繰り返す治療困難者が入院する施設の設備構造、人員配置、治療内容に関する研究」の研究分担者、研究目的・触法行為を行った精神障害者の入院中の処遇の実態を明らかにし、検討を行う・の分担研究者、資料お求めの方はご希望があれば送付します。また、日本精神保健政策研究会運営副委員長)、全家連(全国精神障害者家族会連合会)常務理事兼日弁連刑事法制委員会精神障害者小委員会幹事、池原毅和氏、法務・厚労両省の官僚、その他いくつかの病院のDr、有識者などで構成。
この検討会は、元法務省大臣・保岡氏の強力な後押しが2年位前からあって、今般、開催に至る。
その中でさかんに推奨、強調されているのが、欧米の司法精神医療である。→日本との法体系の格差を抜きにこれらを引き合いに出すには無理がある。(日本精神神経学会 精神医療と法に関する委員会 委員長 富田三樹生氏)
そもそも精神障害者=犯罪者予備軍とみなす、この検討会は●◆闘連×会議、などが繰り返し主張してきたように“精神病”者に対する差別観の露呈にほかならず、また、「保安処分」推進の下準備として画策されて来ているもの、「治療困難者」、「処遇困難者」に対する専門的治療施設設立を目論むものであり、先述したような現行の精神医療の構造的欠陥、司法問題をなおざりにしてその様な、特別精神医療や司法精神医療などを設立することに対してはなはだ疑問です。特に司法の関与に関しては慎重になるべきです。この様な検討会は即刻中止すべきです。
このように犯罪精神障害者などに対する処遇に関する検討会がなされていた最中、6月8日(2001)に大教大児童殺傷事件が発生しました。直に、首相・小泉は「保安処分も視野に入れて法改正に」と事件に関して言及しました。
各団体が、声明文を出しましたが、わたしは精神科医療懇話会という会の声明文を高く評価しています。
そこで、政府・与党3党PT、自民党PTが本事件との関連で対策を講じたわけですが、これらの案は、来年(2002)の通常国会(1月)に上程されます(3・15閣議決定)。また、法務省も独自の案を上程する予定。法務省案=処遇判定機関を地裁に設け、裁判官と精神科医の合議制とする方針。裁判官並の評決権を持つことは職業裁判官以外の専門家が司法判断に関与する「専門参審制」(→合議体)が日本の裁判所で初めて導入されることを意味。
D.重大な犯罪を犯した精神障害者とは誰を指すのか:
殺人、強盗、強姦、強制わいせつ、傷害、放火などと。傷害…人の髪を切っただけでも傷害。(未遂も含む「傷害は除いて」)
E.「特別立法」(心神喪失者予防法)と混同されがちな保安処分とは何か?:
★保安処分とは、改正刑法草案における保安処分;改正刑法草案97条〜111条 治療処分と禁絶処分。裁判所の言い渡し。精神の障害により、責任無能力の者(心神喪失者)ないし限定責任能力の者(心神耗弱者)が、禁固(=自由の剥奪を内容とする刑罰で[自由刑]労務を科さずに監獄に拘置するもの。無期と有期[1ヶ月以上、15年以下]がある。)以上の刑にあたる行為した場合において、治療および看護を加えなければ将来再び禁固以上の刑にあたる行為をするおそれがあり、保安上必要と認められる治療処分。保安施設に収容。期間3年、2年ごとに更新(裁判所の命令による)。仮退所(行政官庁による)ないし退所(期間の経過による)後の療護観察、必要なら再収容。
★まとめると、
保安処分は、裁判所が、刑の代わりに言い渡す処分である。
1.禁固以上の刑にあたる行為を行った
2.精神障害や薬物濫用によって、犯行当時、責任能力のないという理由で、無罪や不起訴になった
3.そのまま放置すれば、再犯の可能性がある
4.保安上必要がある
5.治療処分は治療・看護を行い、3年が基本で裁判所が最長4年まで延長を決定できる。但し再び重大な犯罪を犯すおそれがある場合はそれ以上の延長も可能である。
6.禁絶処分は薬物の習癖を除く。1年が基本で裁判所が最長2年まで延長を決定できる。
★さらに歴史を遡及すると→戦前の草案、刑法改正仮草案→精神障害者よりむしろ常習犯、累犯、特定の思想者とか浮浪者というその社会的に問題のあるという人を囲い込むための制度、予防処分、労詐処分というのがある。精神障害者以外にも危険な者は一定程度の裁判所の判断によって刑はふせないけれど、将来の危険を考えて拘禁できるという刑を草案に付けている。戦後には無くなったが、その思想が実は、保安処分反対の根本だった、つまり今もその問題が介在している。(中山研一氏京都大学名誉教授、著書「安楽死と尊厳死」「刑法改正と保安処分」「現代社会と治安法」など。)
★続けて保安処分とは
一般的には、その反社会的行為から社会を防衛するために、刑罰を補充しあるいは刑罰にかえて裁判によって課する処分。刑法の基本的考え方というのは、ある罪を犯したときその罪の大きさに応じて刑罰を課するということ→罪刑法定主義。資本社会が発達して矛盾が強まってくると、刑罰だけでは応じきれない→結局何をしたかということではなく、どういう人間かということに注目するようになった→犯罪者の危険性を問題にする。広い意味、ある職場に就くことを禁止する、禁酒、運転免許剥奪、居住地の制限。その人の自由を制限すること。精神保健福祉制度の措置入院制度も。狭い意味、その対象となる人を一定の施設に収容して自由を剥奪すること。刑務所とは違ったところに監禁しておく。少年法の保護処分。売春防止法による収容処分。
刑法改正の保安処分
精神の障害、過度の飲酒、薬物の使用習癖、依存症。
禁固以上の刑にあたる罪を犯した者がまた同様の行為を犯す恐れがあるときに裁判所の言い渡しに夜って保安施設へ収容。
習癖除去に対する必要な処置。期間、1年で2回まで更新可能、最高3年。
“精神病”者の治療看護、5年、限定なしに無期限に更新することができる。
犯罪行為をした人にその人の「危険性」に応じて、刑罰にかえて何かの監禁処分―それが治療と呼ばれることもあるが―をすること。
★法務省における刑法改正作業、厚生省(厚生労働省)の動き
1880年(M13) 旧刑法制定、フランス刑法にならっているもの
1907年(M40) 現在の刑法制定:刑罰だけで犯罪は防ぎきれない。国内で保守的な国家主義的な反動とが絡み合って刑法改正の動きがでてきた。
1926年 「刑法改正ノ綱領」「本邦ノ淳風美俗ヲ維持スルコトヲ目的トシ」「保安処分トシテ労働嫌忌者、酒精中毒者、精神障礙者ニ関スル規定ヲ設クルコト」→大きな方針。
1927年 「刑法改正予備草案」@予防監護=今の治療処分に相当A酒癖矯正=今の禁断処分、禁絶処分B労働留置=労働嫌忌者に対して強制労働させるC予防拘禁=特定の思想の持ち主、戦前の治安維持法、国体に対して危険思想を持った者に対して適用。
1940年 「刑法改正仮案」@監護処分A矯正処分B労作処分C予防処分。
1961年 「刑法改正準備草案」法務省顧問、小野清一郎委員長(東京帝国大学名誉教授、刑法大御所、このときは法務省特別顧問)
1963年 中垣国男法務大臣、法制審議会(刑事法特別部会部会長小野清一郎氏)に対してに対して刑法全面改正の要否をし諮問。1926年の綱領を思想的に受け継いでいる。第3章委員会を受け持つ(小委員長 植松正氏)。治療処分と禁断処分が残った。
2つの案が出た。A案 法務省系の施設で禁断処分→禁絶処分。
B案 保安処分ではなくて療護処分という名に。裁判所が認める時は、法務省系の施設だけでなく厚生省系の医療施設を使う。
A案賛成が圧倒的
1964年3月24日ライシャワー米国大使刺傷事件。アメリカ大使館前で19歳の分裂病の少年に刺される。
5月1日池田勇人首相、精神衛生法の緊急一部改悪指示。警察官職務執行法、「警察官は通報することができる」が「警察官は通報する義務がある」に改悪。
5月2日改悪反対運動改悪阻止。
7月25日朝日新聞、「野放し状態なくせ」慶応大脳生理学林髞教授…「私はむしろ変質者の隔離を計るべきだと思う」
7月29日読売新聞、野放しの精神障害者「保安処分制度化を」
1974年 「改正刑法草案」が可決→粉砕される。
1980年 新宿駅西口バス放火事件
1981年 深川連続殺人事件
12月 保安処分制度刑事局案「禁固以上の刑にあたる行為をしたとき」→「重い犯罪行為したとき」に限定。
1990年 厚生省、厚生科学研究(主任研究者 道下忠蔵氏)「精神医療領域における他害と処遇困難性に関する研究」全国から950人の精神障害者をリストアップし「処遇困難例」とする処遇困難性についての研究報告→病院で扱いにくい人をどうするのかというような報告。処遇困難者専門病棟を設立しようと画策。
1994年3月23日厚生省精神保健課へ抗議行動。精神保健課課長平良「念書」「いわゆる処遇困難者専門病棟については精神障害者の合意を得ないまま強硬に病棟建設を進める所存ではありません」。
10月24日全国「精神病」者集団が道下忠蔵氏にアンケートを焼却させる。
P.4
1999年 精神保健福祉法改悪国会の委員会の付帯決議「重大な犯罪を犯した精神障害者の処遇のあり方については幅広い観点から検討を行なう」
2000年 厚生省、厚生科学研究(分担研究者 山上皓氏)H12〜14(予定)
「触法行為を繰り返す治療困難者が入院する施設の設備構造、人員配置、治療内容に関する研究」→個別調査・B票では、個人名の記入はないが、精神保健福祉法25条通報(検察官通報)であるため、結局個人が特定されてしまう、患者の人権に配慮しないプライバシーを患者の同意無しに暴き立てる調査票である。(IN)
2001年1月29日法務省・厚生労働省合同検討会発足。
目的「…精神障害に起因する犯罪の被害者を可能な限り減らす…精神障害者が同様の犯罪を繰り返さないようにする…」
協議・検討事項 1.精神障害に起因する犯罪の発生を予防するた めの方策と検討
2.重大犯罪を犯した精神障害者の処遇の決定と 処遇システムの在り方の検討
抗議活動、蘇詩共10
参考図書など
「第三帝国と安楽死 エルンスト・クレー著 批評社」
「ナチス もう一つの大罪 小俣和一郎著 人文書院」
「精神医療と保安処分 青木薫久著 批評社」
「精神病院の起源 小俣和一郎著 太田出版」
「FORBIGENER 精神医療 長野英子著 現代書館」
「精神医学とナチズム 小俣和一郎著 講談社現代新書」
「ナチスドイツと障害者『安楽死』計画 ヒューG・ギャラファー著 現代書館」
「アウシュビッツの医師たち『ナチズムと医学』 F・K・カウル 三省堂」他多数。
呉秀三の言、1918年、
「我邦十何万人ノ精神病者ハ実ニ子の此病ヲ受ケタル不幸ノタトニ此邦ニ生レタル不幸ヲ重ヲ ルモノト云ウベシ」
はいまだ“精神病”者の生活に現存する。
加えて、
「刑法改悪 風早八十二監修 新日本新書」
「刑法改正をどう考えるか この危険な現実 刑法改正・保安処分に反対する百人委員会編 三一書房」→共著ですが、針生一郎氏は、先日の集会で「精神病者の表情が、小泉首相、麻原のようだ」と発言したそうですね。
「保安処分 解体へのみちすじ 青木薫久著 三一書房」
「差別の論理 魔女裁判から保安処分へ 岡田靖雄著 勁草書房」
「保安処分立法の諸問題 吉川経夫著作選集第3巻 吉川経夫著 法律文化社」
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「戦争中に今でいうPTSD(心的外傷後ストレス症候群この場合戦闘の中でそのショックで発病すること)に病む兵士の増加に対応して軍はこれらの病院を作った。戦場からこれらの病院に送られた兵士たちは、敗戦後も差別ゆえに故郷に帰ることができず、「未復員」という状態のまま閉鎖病棟に拘禁され続けた。
その中には朝鮮人でありながら「戦犯」とされ、そのショックで発病し下総療養所おくられ、拘禁のまま閉鎖病棟で亡くなった方もおられる。たとえば都立松沢病院では1938年ごろから死亡率が増大し始め、敗戦の年1945年にはなんと入院患者の4割が死亡した。全国の精神病院はどこでも多かれ少なかれ同様の歴史をもっている。
マラリア注射により家族の入院患者を「処分」された、という中宮病院入院患者遺族の証言もある(『声なき虐殺』 塚崎直樹編 BOC出版 1983年)。」
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精神障害者が事件を起こす度に、「精神障害者は危険だ」と言う世論形成がされますが、確かに精神障害者でも犯罪を犯す人がいる人は事実で、本来なら起訴便宜主義などの裁量によって不起訴にされるのでなく、法の裁きを受けるべきでしょう。(起訴法廷主義とまではいわぬが)また、それと同時に考えなければならないのは、精神障害者は犯罪を犯す人もいるが、一方では犯罪を犯さない人もいるということです。日本の精神医療保健福祉の劣悪さを抜きに精神障害者について語るのは、木を見て森を見ずという諺に等しく、その最悪の状態の医療下にある精神障害者は、精神医療被害者と言っても過言ではありません。
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精神障害者は犯罪を犯しやすい危険をもっているということと、犯罪の危険性の予測によって隔離できるという二つの誤った前提に基づいていてこれは、精神障害と犯罪に対する無知と偏見のため正されることがない。
この根強い偏見には、精神科医療の歴史にひそむ暗部がかかわっている。世界的・歴史的大状況をみると、精神障害者に対する認知というのは、つねに社会的逸脱者の処遇にかかわってきた。たとえばフーコーがヨーロッパについて明らかにしたように、浮浪者、犯罪者、貧者など種種雑多な逸脱の烙印を押された人々が隔離され収容されている中から、次第に精神障害者と認知される者が分離されてきた。精神障害者とは当初から逸脱者として社会からラベリングされた人々の中から見出されてきたのである。
文責 Suena