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東京都内のぜんそく患者ら99人が、自動車排ガスで健康被害を受けたとして、国、都、首都高速道路公団、自動車メーカー7社に計約22億円の損害賠償と汚染物質の排出差し止めを求めた「東京大気汚染訴訟」の判決が29日、東京地裁で言い渡された。
高橋利文裁判長は「継続的に発生する大量の自動車排ガスにより、原告の一部に生命の危険を及ぼす可能性のある気管支ぜんそくを発症させた」と述べ、国、都、公団の責任を認め、公害健康被害補償法(公健法)の対象外の未認定患者1人を含む7人に、総額7920万円の支払いを命じた。しかし、最大の注目点だったメーカー責任は認めず、浮遊粒子状物質(SPM)や二酸化窒素(NO2)の差し止め請求も棄却した。
今回の判決は、未認定患者への賠償を命じたことで、現行補償制度の見直しに影響を与える可能性を残したが、差し止めを一部認容した過去の司法判断からは一歩後退した内容となった。原告側は控訴する方針。
賠償が認められたのは、国道や都道、首都高などの沿道に居住し、気管支ぜんそくを発症、増悪させた患者7人。
裁判では、〈1〉排ガスによる都内の広域汚染〈2〉国などの道路管理責任や排ガス規制権限を行使しなかった責任〈3〉メーカーの排ガス対策を怠った責任――の有無が主な争点となった。
判決はまず、大型車の混入率の相当高い沿道沿いでは、ディーゼル排気やNO2と、気管支ぜんそくの発症との因果関係を認定。ただ、「幹線道路の沿道50メートルに居住し、昼間の自動車交通量が4万台を超える地域でのみ自動車排ガス汚染の影響がある」とし、都心部を中心に面的な広域汚染があるとの原告側主張を退け、汚染は沿道付近に限定されると判断した。
その上で、国、都、公団について、「沿線住民の健康被害を防止する有効な対策をとらなかった」として、道路の設置、管理上に落ち度があったと指摘した。
しかし、メーカー責任については、「被害発生の直接原因である幹線道路への自動車の集中について、何らの回避措置をとることができない」などとし、自動車メーカーの不法行為は認められないと判断した。
【東京大気汚染訴訟】 1996年5月、東京23区内のぜんそく患者らが第1次提訴した。2―4次提訴を含めた原告数は505人で、請求総額は計116億7000万円に上る。原告の中には国の補償対象にならない未認定患者が184人含まれている。被告は道路管理者としての国、都、首都高速道路公団のほか、ディーゼル車を生産しているトヨタ、日産、三菱、いすゞ、日野、日産ディーゼル、マツダのメーカー7社。対象道路は国道、首都高、都道の計104路線で、3次提訴以降は多摩地域の幹線道路も加えられた。(読売新聞)
[10月29日15時43分更新]