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「覚せい剤を持っている男がいる」。発端は一本の電話だった。七月上旬、札幌北署員が駆けつけると、同署近くに駐車した車に覚せい剤が入ったビニール袋を持った男がいた。通報し、覚せい剤所持で逮捕、起訴されたのは、長年稲葉被告の協力者だった渡辺司被告(40)だった。
渡辺被告はかつて小樽で中古車販売を手掛け、最近は札幌市内で飲食店を経営、稲葉被告とは私生活を通じて親しい間柄だった。稲葉被告をめぐる事件、疑惑の核心を知る人物だった。
だが、渡辺被告は稲葉被告の知人から六百万円を借り、返済できなかったことで、関係がこじれた。渡辺被告は逮捕前、知人らに「稲葉(被告)のことを全部しゃべる」と告げたという。
渡辺被告は逮捕直後、札幌北署では口を閉ざしたが、拘置質問を行った札幌地裁の裁判官の前で、稲葉被告の覚せい剤使用や大量の所持を供述したとされる。
それを受け、道警は七月十日、稲葉被告を逮捕した。その後家宅捜索を次々と行い、稲葉被告のマンションからロシア製拳銃と覚せい剤○・四四グラム、自宅からは覚せい剤九三グラムが押収された。逮捕は三回にのぼった。
覚せい剤は多量だった。稲葉被告に密売疑惑が浮上し、渡辺被告も法廷で「稲葉被告の疑惑」を明らかにする覚悟だったという。だが、なぜか、九月十一日の初公判を前に八月末、拘置所で首を絞め自殺した。
■交際女性
家宅捜索は、稲葉被告と交際していた道警本部銃器対策課の畑中絹代・元巡査部長(33)の自宅にも及び、覚せい剤吸引用パイプ二本が押収された。元巡査部長は「パイプは稲葉被告のマンションにあった。(発覚したら)まずいと思い持ち帰った」と話したという。
パイプからは薬物反応や指紋が出ず、稲葉被告も「パイプは知らない」と供述しており、この件は罪に問われそうもない。
そして八月十七日夜、稲葉被告と親しい元暴力団員(37)の運転する車が、元巡査部長と稲葉被告の長男(24)を乗せ、事故を起こす。元暴力団員が稲葉被告の逮捕で落ち込んでいた元巡査部長と長男を励まそうと誘い出し、酒を飲んだ後だった。車は元巡査部長の所有だった。
事故後、元暴力団員は現場から逃走、元巡査部長は駆けつけた警察官に「私が運転した」とうそをつき、犯人隠避容疑で書類送検された。元巡査部長は「稲葉被告の関係者と一緒にいたことを知られたくなかった」と供述している。
犯人隠避は逮捕される場合もある。今回は現職警察官による悪質な隠避だった。しかし、道警は「逃走や証拠隠滅の恐れがない」として逮捕せず在宅捜査で処理した。
■おとり捜査
「おとり捜査はあったのか」。道警は現在、稲葉被告が過去に扱った事件の捜査方法などについて当時の上司らから事情を聴いている。
拳銃と実弾を不法所持していたとして一九九七年十一月、小樽市でロシア人船員が稲葉被告らに現行犯逮捕された銃刀法違反事件もその一つ。
公判では弁護側が「知り合いのパキスタン人から『拳銃と中古車を交換してやる』と持ちかけられ拳銃を持ち込んだ。違法なおとり捜査だ」と主張した。背後には稲葉被告の影がちらつく。
しかし、事件を指揮した元上司の道警釧路方面本部生活安全課長の警視=当時(56)=が事情聴取の翌日に自殺したのに続き、事件に関与したとされる渡辺被告も自殺した。
道警内部からは「これらの疑惑事件を稲葉被告ひとりではやれなかったはずだ」との指摘が出ており、疑惑解明の大きな壁になりそうだ。