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異常干ばつ穀物生産を直撃 米中西部、50年ぶりの被害
豊かな平野が広がり「米国の食糧庫」と呼ばれる米中西部。中で
もネブラスカ州東部からオハイオ州まで連なる「コーンベルト」の
一帯はトウモロコシなどの穀物生産と畜産の中心地だ。ここで収穫
された豊富な農作物は、穀物メジャーの手を経て日本へも大量輸出
される。広大な農地と安定した雨量から理想的な農業地帯とされて
きたが、今年秋の収穫風景は例年にない高温少雨で一変した。
▽収穫半減も
「農業を始めて以来、最悪の干ばつだ」―。ネブラスカ州リンカ
ーン郊外に約八・一平方キロの農地を持つトム・ウェーバーさん(
54)は、やせたトウモロコシ畑で大型コンバインを操作しながら
つぶやいた。
かんがい設備が乏しいドライランドと呼ばれる農地では、鮮やか
な黄色の実をつけるはずのトウモロコシの茎が枯れ、茶褐色に変色
した葉は異常気象で大量発生したイナゴに食い荒らされた。所有す
る農地約一一・三平方キロの約85%がドライランドというスティ
ーブン・バイスさん(47)の場合、「今秋の収穫量は昨年の半分
がせいぜい」。「長年一緒にやってきた仲間が農業をやめないか心
配」と表情を曇らせる。
ネブラスカやカンザスなど全米十四の州は今年、「異常干ばつ地
帯」に指定された。統計上、五十年に一度という深刻な状況。干ば
つ自体は米国では決して珍しくないが、「発生地域が全米の50%
以上に及ぶのが今年の特異な点」とネブラスカ大学のマイケル・ヘ
イズ助教授は強調する。
▽廃業農家が急増
中西部や西海岸の州知事は今年六月、国家レベルの包括的な干ば
つ対策を早急にまとめるよう求める決議を共同採択した。決議は「
一九八○年以降、十二の干ばつに見舞われ、毎回十億ドル(約千二
百億円)を超える被害が出た」と指摘。補償金支給など事後的な救
済措置に追われる現状から脱し、今後に備え気象観測やかんがい設
備の充実に重点を置くよう促している。
ヘイズ助教授は、さらに欠かせないのが「被害を受けた農民に対
する精神的なケア」と力説する。家族経営の農家は廃業が急増し、
生計手段を失う極度の不安で自殺に追い込まれる例もある。深刻な
干ばつが農村社会を崩壊させかねないため、一部の州は「ストレス
・ホットライン」を新設、専門家が農民の生活不安の緩和に取り組
み始めた。(米ネブラスカ州リンカーン共同=島田哲也)
(了)
[2002-10-22-16:25]