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(回答先: 浜名湖周辺、地殻変動続く 地震予知連 投稿者 sbs-np 日時 2002 年 8 月 22 日 10:22:30)
第148回地震予知連絡会議事概要
平成14年8月19日、国土地理院関東地方測量部において第148回地震予知連絡会が開催され、全国の地震活動、全国の地殻変動など
に関する観測・研究成果の報告が行われ議論がなされた.トピックスとしては、地殻活動予測シミュレーションモデルの開発と実用化
へ向けての問題点について報告および議論が行われた.以下に、その概要について述べる.
1.全国の地震活動について
最近3ヶ月間では、ウラジオストク付近、福島沖、台湾付近などでM5を越える地震が発生した.
M5以上の全国の地震 (2002.5.01−2002.7.31)(気象庁資料)
2.東海地域の地殻活動について
東海地域の推定固着域周辺では、地殻内で静穏化が見られる一方、フィリピン海スラブ内では昨年から続いていた静穏化が解消した
ように見える.
固着域周辺の地震活動 (地殻内)(気象庁資料)
固着域周辺の地震活動 (フィリピン海スラブ内1997年以降)(気象庁資料)
水準測量結果によると掛川市の水準点140-1に対する浜岡町の水準点2595は従来の傾向の範囲内で変動している.
水準点2595(浜岡町)の経年変化(国土地理院資料)
上下変動の様子を面的に見ると、駿河湾沿岸の沈降、浜名湖周辺の隆起というこれまでの傾向が続いているが、浜松周辺の隆起は昨年
に比べると小さくなっている.
東海地方の上下変動(国土地理院資料)
東海地域の異常地殻変動は依然として継続している.異常地殻変動が開始してからの期間を4つに分けると、東海地域の西側で開始
した変動が東側へ広がり、最近になって南向きの変動が顕著になってくるといった各期間の特徴が確認された.また、これらのデータ
からプレート境界面における断層すべりの時空間発展の様子を推定した結果によれば、イベント開始以来のモーメント開放量はMw6.8
の地震に相当し、東海地域を東西方向に3分割した領域のうち主として中央部で起きていたすべりが次第に東側へ拡大しているように
見える.
平均的な地殻変動からのずれ(精密歴)(国土地理院資料)
東海地方の地殻変動(国土地理院資料)
特徴的な時間帯で見た東海異常地殻変動(国土地理院資料)
断層領域を3分割して西から図示(国土地理院資料)
3.八丈島付近の地震活動について
八丈島付近では8月13日から群発的な地震活動が発生し、15日に島北部の直下へ活動の中心が移動した後、次第に地震数が減少して
いる.また18日には西方に離れた海域においてM4.0の地震が発生したが、群発地震との関係は不明である.
八丈島付近の地震活動経過(平成14年8月13日16時〜9日14時)(気象庁資料)
この地震活動に伴って、八丈島のGPS観測点では、15日前後に東向き5cm程度の変位が観測された.
八丈島地区 GPS連続観測基線図(国土地理院資料)
基線長変化グラフ(国土地理院資料)
同様な地殻変動が海洋情報部の観測でも検出されている.
4.福島沖プレート境界の最近の活動について
福島沖では1938年にM7.5の地震が起きた後、1987年に3つのM6級地震が発生し、アスペリティが存在すると考えられている.海
岸から約40kmの沖合に設置された天然ガス掘削井のGPSデータから、2001年2月25日に発生したM5.8の地震後に、震源の南側で非
地震性すべりが生じたことが明らかとなった.この非地震性すべりは2001年末頃まで継続したと考えられ、長さ70km、幅45km程度
の領域が17cm程度のすべりを起こしたと推定される.この非地震性すべりが生じた領域は1987年の地震のアスペリティとは重なっ
ていない.
2002年7月24日に発生した福島県沖の地震(M5.7)について(東北大学資料)
2002年7月24日に発生した福島県沖の地震(M5.7)について(東北大学資料)
こうした結果はプレート境界の挙動を推定するために海域における地殻変動観測が有効であることを示す好例である.
5.地殻活動予測シミュレーションについて
今回のトピックスでは、「地殻活動予測シミュレーションモデルの開発と実用化へ向けての問題点」と題して、地震予知研究体制の
新たなパラダイムと期待される地殻活動予測シミュレーションの現状における到達点や今後の検討課題などに関して議論を行った(世
話人:平田直委員).
地殻活動予測シミュレーションは地殻活動のモニタリングと物理法則に基づく数値モデルを組み合わせることにより、将来の地殻活
動を定量的に予測するものである.こうした取り組みは、1990年代における地震発生物理学の発展、すなわち地震破壊過程を支配す
る物理法則の解明、プレート運動に起因するテクトニック応力蓄積過程のモデル化、曲面における地震破壊伝播過程の計算手法開発な
どによって初めて可能となった.また、日本列島全域にGPS観測網が整備されたことも地殻活動予測シミュレーションを実現可能にし
た大きな要因である.
1997年から開始された超並列スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」の開発の一環として固体地球シミュレーションソフトウ
ェアの開発が行われてきており、現在、プロトタイプのモデルが構築されつつある.このシミュレーションモデルでは、日本列島周辺
域のプレート境界において、テクトニック応力の蓄積過程、地震破壊の準静的な核形成過程、動的な断層破壊過程、断層の強度回復お
よび地殻内応力の再配分過程が繰り返される大地震の発生サイクルを、観測データを取り込みつつ、物理法則に基づいた数値計算によ
り定量的に再現・予測する.さらに、地震発生過程のモデルを仮定すれば強震動の予測が可能であり、基盤構造の解明や計算機の能力
向上によって予測精度の改善が期待できる.
地殻活動予測シミュレーションモデルのさらなる発展のためには、地殻活動を支配している断層面の形状や摩擦構成則パラメータの
分布などの構造を解明するとともに、より多くの観測データをモデルに取り込めるようにすることが必要である.こうした研究を地震
予知研究計画の中でしっかりと位置付けるとともに、多くの研究者が積極的に取り組むことが求められる.
地殻活動予測シミュレーション・モデル(1)(東京大学資料)
地殻活動予測シミュレーション・モデル(2)(東京大学資料)
地殻活動予測シミュレーション・モデル(3)(東京大学資料)
地殻活動予測シミュレーション・モデル(4)(東京大学資料)
http://cais.gsi.go.jp/YOCHIREN/JIS/148/index148.html