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分析「日本の政治を読む」〜“司令塔なき経済運営”で景気は良くなるか[PAXNet] 2002/08/05 09:04:00 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 8 月 05 日 13:12:36:

【政局の焦点】

●あり得ない石原副総理、亀井外相

政局は通常国会も終わり、事実上の夏休みに入った。政界では「8月中は政局に絡む話は何もない。動きがあったとしても無駄な動きで、目立ちたい人が騒ぐだけ」(青木幹雄自民党参院幹事長)との見方が一般的。次の動きは9月末の自民党役員人事に合わせた内閣改造が焦点となる。小泉純一郎首相は1日の記者会見で「全くの白紙。9月末に改造するかどうか考える」と述べたが、それは先の山崎拓幹事長との会談で、「9月末の改造を最終決断」と報じられたため、主導権確保の面から軌道修正のポーズをしてみせたに過ぎない。
同日の首相会見で特徴的だったことは、山崎幹事長について「私の楯になっていると感謝している」と、同氏を最大級の表現で持ち上げ、幹事長再任を事実上言明したことだ。女性スキャンダルなどで四面楚歌の状態にある山崎氏にとって、首相のこの一言は何にも代え難い「天の声」と聞こえたろう。これによって同氏の首相への忠誠心がさらに高まったことは言うまでもない。もっとも党内では「楯というより邪魔ではないか」(橋本派幹部)と、首相発言を皮肉る向きの方が多いのだが。
ところで内閣改造に関して、石原慎太郎氏が都知事兼務のまま副総理として入閣するのではないかとか、亀井静香前政調会長が大物外相として起用されるなどの噂が飛び交っているが、これはあり得ない話だ。本人あるいはその周辺が意図的に流しているものとみられる。特に石原氏については首相側近が「田中真紀子とおなじく性格が破たんしている。1時間だって一緒にいられない」と、口を極めて石原氏を罵っており、首相の本音もほぼ同じとみてよいだろう。亀井氏についてはそこまで嫌っていないものの、結局、首相は自分の言いなりになる人物以外を閣僚として採用する気がないことは確かだ。側近が「首相は政権に全く恋々としない。権力欲が全くなく、政権を担当するということは美しい音楽を奏でるようなものだ」と述べていることからも、亀井氏はを閣内に入れることは“不協和音”になると判断しているようだ。

●米国のイラク攻撃は来年初めか

次に臨時国会の召集時期は結論を先に言うと、10月初めの可能性が高い。9月末召集は23日に民主党代表選があり、首相も同時期に欧州へ出張するなど不可能。また一部に出ている10月27日の統一衆参補選の後の11月に召集するとの案については、年末には予算編成が控えており、通常国会で継続審議となった有事関連法案や個人情報保護法案の成立のためには時間が足りない。また10月初め召集でも、景気動向によっては補正予算案が提出される可能性が高く、そうなれば最初の2週間は補正審議で時間が取られることになる。
一方、臨時国会では、米国がイラク攻撃に踏み切った場合の日本の対応が大きな問題となるかもしれない。米国のイラク攻撃は「準備期間に半年くらいかかるため、年内はない」(政府筋)との見方から、来年初めの可能性が高まっている。これに対し、日本へは米英軍艦船への洋上補給、船舶検査活動、機雷除去などの要請があるとみられる。これらがテロ対策特別措置法にいう「国際的なテロリズム防止及び根絶のための国際社会の取り組みに寄与するため」に本当に該当するのかどうか議論の余地がある。また戦闘中のイラクにとっては明らかな敵対行為となる機雷除去作業は、果たして集団的自衛権の行使に当たらないのかが大きな争点となろう。

【経済対策】

●ブレる経済政策

このところ新規国債発行30兆円枠の撤廃、1兆円減税、ペイオフ完全解禁の一部見直し―など経済政策の大きな変更が続いている。「経済は生き物」であり、「過ちを改むるにはばかることなかれ」との論語の言葉に従えば、いいことなのだろう。しかし、例えば、ペイオフは主に企業が扱う当座預金を保護、個人でも新型決済性預金は保護する方針を打ち出しながら、小泉首相はあくまで「ペイオフは予定通り」を強調する。また1兆円減税についても経済財政諮問会議の民間議員からの提案に賛成し、「1兆円超の減税検討」を指示しておきながら、その舌の根も乾かないうちに、財務省の強烈な巻き返しにあい、諮問会議の「2003年度予算の全体像」から「1兆円減税」の言葉が削除されるといった具合だ。
先も触れたたように、変わること自体は結構なのだが、何か腰の座っていない経済政策のブレのようなものを感じる。また紙幣のデザイン一新についても、これで経済波及効果が1兆円以上ありそうだとか、いい加減なことを政府自ら言っているのはどうしたことか。自動販売機メーカーなどはともかく、景気全般の浮揚に効果などあるわけがないのは常識だろう。こういう行き当たりばったりの“司令塔なき経済運営”では結局のところ、日本経済の回復にいい影響を与えるとは思えない。

●信金の普通預金は郵便局に流出か

ペイオフは今年4月の定期性預金の解禁で、資金が大手銀行に大量に流出した第2地銀や信金、信組の悲鳴に根負けした政府が旧来型の護送船団方式を再び採用したにほかならない。そこには「ペイオフが完全解禁されれば、中小零細企業への融資ができなくなる」との脅し文句が効いたことは間違いないだろう。また実際の方針変更に当たっては、与党の一員である公明、保守両党の強い解禁延期の要望が強く働いた。しかしペイオフ解禁は7年もの準備期間があり、しかも“方針転換”の前日には金融庁長官が記者会見で「ペイオフ延期や激変緩和措置はない」と言い切っていたのである。これでは「その場しのぎ」との国際非難を受けてもやむを得ないだろう。事実、この方針変更によって、日本の金融システムがなおも全面解禁に耐えられるほど強靱ではないと受け取られている可能性は大きい。
政界では今回の措置そのものについては評価しつつも、首相が「予定通り」と言い張っていることには批判的だ。青木参院幹事長は「間違ったことをしたと思ったら、間違いでしたとはっきり言うべきだ。従来の方針が正しいという前提のままで小細工するから分かりにくくなる。きちんと説明すれば国民は分かってくれる」と、首相の往生際の悪さに苦言を呈している。
もう一つの疑問は、今や利子はないにも等しい普通預金は対象とせず、新型預金なら保護するとしている点だ。一般庶民が電気、ガス、水道料金などの支払いに利用している普通預金はまさに決済性預金そのもので、たとえわずかでも利子がつくことがいけないのなら利子ゼロにすればいいではないか。ここで新たな口座を作らなければならないのであれば、同じ信金、信組内ではなく、経営破たんの恐れがない郵便局の振り替え口座を選択する人が多いと推測される。それでは普通預金の流出は防げないだろう。
(政治アナリスト 北 光一)

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