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■統合失調症──病名を変えたのなら
統合失調症。精神分裂病と呼ばれてきた病気の新しい名前だ。横浜で開催された世界精神医学会に合わせて開かれた日本精神神経学会総会で変更が決まった。
いまでは適切な治療を受け、生活環境が整っていれば、社会に出て暮らしていける病気である。残念ながらそのことが広く知られてはいない。不治の病というイメージが染みついた名前を捨てるのは、誤解をなくす第一歩になろう。
だが、病名変更だけで正しい知識が広まるわけではない。その趣旨を伝える地道な活動を望みたい。
より大きな問題は、この国では、肝心の適切な治療や環境の整備が十分ではないことである。
学会中に開かれた公開講座で、国内の精神病院では、薬の多種類・大量処方が際だって多いことが報告された。毎食後7種類、寝る前に3種類、合わせて毎日50錠飲むようなケースがざらにあるという。
治療薬の中心は抗精神病薬だ。それに感情を調節する薬や睡眠薬などが加わる。日本では、抗精神病薬が3種類以上処方されている患者が4割にものぼる。1種類のみは2割程度に過ぎない。一方、米国や英国は1種類が8割以上。フランスは1種類は約5割で、2種類併用が4割あるが、3種類以上は少ない。
なぜ日本では世界の主流と異なる処方がなされているのか。
大きな理由は入院中心主義だろう。精神病院の入院患者の数は外国と比べて飛び抜けて多い。一方、医療スタッフの基準は一般病院より手薄でいいとされている。個々の症状に応じたきめ細かな治療より、薬の一括大量処方に傾きやすい。
世界精神医学会では、入院中心主義を続けている日本の精神医療の後進性を批判する声が出た。
保険制度の問題もある。多種類処方が制限されておらず、処方しただけ保険で支払われる。社会で生活できるようにするためのリハビリなどは、手間と時間がかかるのに保険の点数が低い。病院経営という面からも薬に頼りがちになる。
多種類の薬を飲めば効果が上がる、という科学的なデータはない。副作用の方は間違いなく増える。眠気や疲れが抜けず、何をする気も起こらない、といった患者は多い。そのためになかなか退院できない、という悪循環に陥っている。
効果の裏付けがない多剤大量処方から、一刻も早く脱却すべきだ。
ただ、飲み続けていた薬を急にやめると、症状が悪化するなどの影響が出かねない。薬の効果と副作用を一つひとつ見極めながら減らしていくのは、医師と患者の共同作業になる。
日本精神神経学会は病名変更にとどまらず、適切な医療と環境整備の推進にも指導的な役割を果たしてほしい。