キノコ類やハーブ類などを使った民間のがん代替療法の実態調査を、厚生労働省の研究班が始めた。科学的な根拠が乏しく、専門医の多くが効果に疑問をもちながらも代替療法にすがる患者も少なくないとみられる。研究班は、がん専門病院やホスピスなど全国60以上の施設で数千人にアンケート。効果や副作用の検証につなげたい考えだ。
主任研究者の兵頭一之介・国立病院四国がんセンター内科医長によると、患者に、代替療法の経験やその種類、費用、副作用の有無、その程度などを聞く。病状や不安、ストレスも尋ね、どんな気持ちから代替療法を使うのかも調べる。
代替療法には様々なものがある。痛みをとる針きゅうや香りによるアロマセラピーなど補完療法とも呼ばれるものは治療が目的ではなく、気持ちを癒やしたり症状を軽くしたりする効果を狙う。
これに対し、多くの医師が頭を悩ますのは治療を目的に健康食品などを使うケース。臨床試験で科学的に有効とされたものはほとんどない。兵頭医師らが専門医約750人に尋ねたところ、8割が「効果はあまりない」と答えた。
ところが、多くの患者ががんが治ることを期待して代替療法を選んでいるとみられる。四国がんセンターで入院患者192人に聞いた結果、3割が試していた。費用は月に10万円以上が1割。20万円以上の人もいた。
こうした実態を全国的に調べた例はない。研究班は秋までにデータをまとめる予定。内外の文献を調べ、科学的な根拠があるものをデータベース化する計画もある。