(回答先: 花粉症について(免疫について知ろう) 投稿者 ROM潜 伊−HEXA号 日時 2002 年 3 月 24 日 16:21:15)
H
L
A
の
不
思
議
.....HLA の不思議.....
‘時空を超えた身内’を探そう
「どうしてできたHLA」
HLAは自分以外のものを区別する免疫の基本的な部分を担っています。HLAはウイルスなどの外敵とのたたかいで変化してきました。ウイルスは宿主がないと生きていけない寄生体(パラサイト)です。寄生するためにホストの免疫をかいくぐるために自分をどんどん変化させます。新種のウイルスは次から次へと現れます。宿主たる人類もそれに対応してHLAを多様化させてきました。変異するだけでは足らなくていくつものHLA分子をつくり、「遺伝子重複」というわざで作り上げました。人類発祥のずっと前に・・・
「複雑でもOK」
そうです。HLAは人類がこの世に姿を現すずっと前から進化してきたものです。自然が数千万年もかけて進化させ作り上げたシステムです。骨髄移植成功の三大要因とされてきたのは年齢と病態とHLAでした。これは正しいのですが、HLA適合の重要さが格段にクローズアップされてきました。もっとも、年齢と病態は人知ではどうしようもないことです。HLA適合性はたくさんのドナーがいる骨髄バンクと、技術の革新でなんとかなりそうです。自然に対しては挑戦よりも「調和」がふさわしいのです。HLAのバリヤーは「超えようとする」よりも「調和、すなわち適合させる」方が理に適っているのです。
「人類は1人の女性から生まれた?」
細胞の呼吸をつかさどるミトコンドリアという小器官があります。ミトコンドリアは核にある遺伝子とは違って、細胞質遺伝をしますから(精子には細胞質がありません)母系遺伝をします。この遺伝子を解析して人類の起源を探ると、人類はアフリカにかつていた一人の女性に帰着するといいます。ところが現人類が持つHLAの多様性は人類が進化した数百万年でできたとは到底考えられません。人類発祥のときにすでに「もとになる」HLA多様性は存在したに違いありません。人類は「多発的」に発祥したとしか考えられない、・・・これがHLA多様性の進化から考えられる唯一の結論です。
DNA (画像説明)
米国ブルックヘブン国立研究所のタンパク質データベース(PDB)を使用
111D, DEOXYRIBONUCLEIC ACID, SYNTHETIC, T.BROWN,G.A.LEONARD,E.D.BOOTH,J.CHAMBERS
「HLAで人類の進化がわかる?」
HLAは第6番染色体の上に遺伝子が密接に連鎖して存在します。HLA分子は一本の染色体に順序良く並んで、親から子へ伝わります。このHLAの1セットをハプロタイプといいます。HLAハプロタイプそのものに進化的な優位性があるともいわれます。ある環境ではあるHLAのセット(ハプロタイプ)が生存に有利に働くのです。「ある一定の環境条件では」維持されやすいものです。日本列島と中国大陸や朝鮮半島では環境が違いますから、違うハプロタイプが選択されて維持されます。地理的に近くても環境のちがいでハプロタイプの頻度は淘汰選択によって変わってきます。
「人種とHLA 」
人種によってHLAの分布は大きく違います。三大人種であるモンゴロイド、黒人、白人は古い時代に分岐しているので、HLAも違うのです。そのうえ、上で述べたその後の進化でアジア人でも、住んでいる環境によって淘汰が働き、国ごとにその分布にちがいが生じました。同じ人種間ではとくに近隣の国々では住民はハプロタイプを共有します。問題は頻度のちがいです。
「だからアジア骨髄バンク!」
日本人に少ないハプロタイプでも中国や東南アジアでは頻度の高いものがあります。逆に日本人に高頻度であるハプロタイプが他のアジア地域ではまれなハプロタイプであることもあります。HLAハプロタイプを共有しながら、選択によって頻度にちがいが生じて「国」や「地域」ができています。一国ででっかい骨髄バンクをつくるより、多様な地域に適切なサイズの骨髄バンクを設立して連携する方が合理的です。
「HLAで人類の移動を追跡 」
HLAハプロタイプは少なくとも数千年は維持されます。また他の多型性より格段に種類が多いものです。そして、同じハプロタイプが別のところで別の時期に発生することはまずありません。このことは「ハプロタイプの集積を追うことはそのハプロタイプをもっている人の遠い祖先の移動を追うことに等しい」ことを意味します。あなたのハプロタイプがわかれば、祖先が移動してきた後をたどることができます。膨大な他地域のHLAデータが必要ですがね。これもアジア骨髄バンクを設立すればデータは自然に得られるでしょう。
「ドナー登録は「時空を超えた親族探し」」
別の人間が同じハプロタイプを持っているとすれば、それは「祖先を共有している」ことの100%に近い証拠です。HLAハプロタイプはよく維持され、同じハプロタイプが別々にできることは100%否定できるからです。ハプロタイプを共有しているドナーと患者は祖先を濃く共有している証拠です。骨髄バンクで検索されることはその二人が「時空を超えた親戚である」見事な証拠になります。
監修:佐治博夫
まだ見ぬ【患者からドナーへ//ドナーから患者へ】Message
もう1人の私【骨髄移植の不思議//HLAの不思議//骨髄は海を越えて】
【目次】【バンクの中の私//ネットの中の私】
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