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米株式市場は完全に「弱気モード」に。景気の見通しは以前の過剰な期待から過剰な悲観に変わりつつあるようだけれど、そんなに悲観一色になる必要もないのでは!?
■ ナスダック指数ついに1500台に逆戻り
ゴールデンウィークの最終日、5月6日(月)の米国株式市場ではついにナスダック指数が昨年10月以来の1,600割れとなりました。市場は完全に「弱気モード」に移行したようです。昨年のテロ以降の市場の動きは「加熱」と「悲観」が非常に極端なため乱高下していますが、現在は「悲観」一色になってきたような気がします。
この日は翌日にFOMC(米国連邦公開市場委員会)を控えていました。市場では、ほぼ100%FF金利の引上げ(現在1.75%)や景気見通し(現在は「中立」)に変更はないと見られていましたが、グリーンスパン議長の声明の内容が非常に弱気になることを嫌気していました。実際の声明はかなり弱気で「持続的経済成長にとって不可欠な最終需要の強さの程度は、今後複数の四半期に渡ってなお不透明」だと述べています。株式市場はこの声明が出た後さらに下げてしまいました。
■ 1-3月期の企業決算は不振、4-6月期に対する強気見通しが後退
市場が一気に弱気に転じてしまった背景には1-3月期の企業決算の不振があります。調査会社トムソン・フィナンシャル・ファースト・コールによればS&P500の構成企業の1-3月期決算は、事前予想の前年同期比8.6%減益を下回る12%減となりました。1-3月期のGDP成長率が+5.8%という高いものだけだっただけに市場のショックが大きかったようです。しかしながら筆者が先週のコラムで指摘したようにこの+5.8%のうち+3.6%は「在庫積増し」であり、実際に売れたわけではありません。株式市場の参加者に「過剰な期待」があったのは間違いないでしょう。
現在の焦点は4-6月期のGDP成長率と企業決算に対する見通しです。今度は「過剰な期待」が「過剰な悲観」に変わりつつあるように思えます。筆者は過剰に悲観になる必要もないと思っています。
■ 循環的に景気拡大局面にあることは間違いないが、90年代後半の強さは期待できない
まず、景気が循環的に拡大局面にあることは間違いありません。しかもこの拡大は始まったばかりです。おそらく昨年の10月くらいが底になっており、まだ始まって半年程度しか経っていません。一旦始まった景気回復はなかなか終わるものではありません。
しかし、90年代後半の設備投資が異常なまでに伸びて経済全体がものすごい勢いで成長するような状態にはもう戻らないと思います。米国、また、米国人の消費を支えるアジア等の輸出基地には、結果としてかなりの過剰設備ができてしまっています。この過剰設備の解消は一朝一夕で終わるものではありません。現に、日本のバブル時代に生まれた「過剰」はそれから10年以上経ってもまだ解決には程遠いところにあります。
■ 市場はまだバブル時代に戻ると思っているようだ!
この様な状況の中、「加熱」と「悲観」を繰り返しているのは、一言で言えば、市場がまだ米国経済が90年代後半の経済に戻る見込みがあると信じているからだと考えられます。すなわち、循環的に景気が上向いてくるとバブル時代のような景気まで戻ることを期待するため「加熱」し、逆に、仮に景気が上向きでも(バブル時代に戻るという)期待よりも勢いが弱いと「過剰に悲観」してしまうという状態が続いているのです。しかし、冷静に考えれば、どうしてもあの時代に今すぐ戻ることは考えられません。
■ 投資家として重要なのは、「今、長期的に見て割安なのか割高なのか」
現在のような「加熱と悲観」を繰り返す相場環境の中、加熱する場面では買い、悲観的な場面で売ることで利益を上げようと考えるのは自然なことです。が、これは往々にしてうまく行きません。このような短期的な動きを追いかけるのは、タイミングを1日、極端な話半日間違えると、パフォーマンスが大きく違ってくるため得策ではありません。
筆者がお勧めするのは、この先1年〜3年くらい株式市場がどうなるのか考えることです。これはやってみると非常に難しく、「景気循環」に対する幅広い知識と論理構築が不可欠です。一流のプロのファンドマネージャーはこの点がまず人より優れています。そして、その一流のマネージャーをもってしても、人によってそれぞれ結論が異なってきます。しかしながら、個人投資家であっても、そうした考え方を普段からやっておくことが私は非常に重要だと思います。
仮に、あなたの出した結論が「ナスダック・バブル崩壊から2年が経過した。今の相場を見ると再びテロ後の安値に近づいている。短期の景気循環も上向きだ。したがって今の水準は大底に近いのではないか?今後3年くらいで見れば買いだ。」というものであれば、多少一時的に下がってしまって損失が出ても、また、市場が「過剰と悲観」で乱高下しても、そのまま保有し続けることができるでしょう。そして、自分の見通しが正しければ2〜3年後には利益を手にしているはずです。売買手数料などを考えれば、短期的な相場の動きを追いかけるよりも、自分の考え方が当たったことの利益ははるかに大きくなるのではないでしょうか?
さて、筆者の個人的な見方は上記に近づいています。ただし、景気循環は「短期」から「超長期」までいくつもの波があり、例えば、「平和の配当」による財政黒字の局面は既に終わっている可能性がある等、筆者の見過ごしている長期・超長期循環上のリスクが、上向きな中短期循環を相殺してしまう可能性もあります。逆に、筆者がまったく気づいていないような動きが隠れている可能性もあります。皆様はどのようにお考えでしょうか?
提供:株式会社FP総研