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今の世界経済はアメリカ人の旺盛な消費欲が支えていると言っても過言ではありません。それなのにここ最近はドル安の傾向。日本や欧州にとってもこの状況は良いとは言えない!?
■ 「米国株安」「ドル安」「長期金利低下」が進行中
4月26日(金)、NYダウ平均が約2ヶ月ぶりに1万の大台を割りました。この日発表された1−3月期のGDP速報は年率5.8%の成長で、市場予想の5.0%を上回ったのにもかかわらずです。ナスダック指数に至っては1,700の大台も割り込み、昨年10月以来の水準に落ち込んでしまっています。
「ドル安」も進行しています。ユーロ/ドル相場は年初以来の0.9台、円も128円台での推移となっています。長期金利も3月末から約0.4%低い5.1%にまで下がってきました。市場は米国経済の勢いがこの先弱くなることを織り込みつつあります。
利上げ懸念も薄れてきました。一時は「年末までに1.75%の利上げ」というのがコンセンサスでしたが、現在は「0.75%程度」に落ち着いてきています。
■ 1−3月期のGDP統計をよくみると...
米国の1−3月期のGDP成長率は+5.8%ということですが内容があまり良くないのです。なんと、この内の+3.6%分が単なる「在庫の積み増し」だからです。昨年10-12月期はこれが-2.4%ですので、「クリスマス商戦が予想よりも悪くなく10-12月期に在庫が一掃されたため」、「この先も売れる可能性に賭けて在庫を積みました」というのが、この3ヶ月の動きだということになります。
また、政府支出による成長部分がテロ以降非常に増えており(前年比+5.8%)財政黒字に対する懸念が出てきています。財政赤字になれば長期金利の低下阻害要因となりますので要注意です。設備投資も最悪期は脱しているとはいえまだマイナスが続いています。とくにソフトウェア投資が不振で、受注を見てもあまり期待できない状態が続いています。
このように「今は良いけれども、この先には不安を感じさせる」というような内容であったため、市場は典型的な「好材料出尽くし」という反応を示したのです。
■ ドル安には疑問、米国がダメな時は、欧州や日本はもっとダメになるのでは?
筆者は株式市場の下げについては予想していた通りで納得が行きます。また、長期金利の低下についても、テロ以来の相場は乱高下がはなはだいためこの先順調に続くか予断を許さないものの、予想通りです。しかしながら「ドル安」については疑問です。「米国がダメな時は、欧州や日本はもっとダメになるのでは?」と考えるからです。
現在、世界は誰がどう見ても「アメリカ人の旺盛な消費欲」が世界を支えています。それが消えた時、果たして世界はどうなってしまうかを考えてみましょう。
まず、最近景気が少し明るくなってきたような気がする日本から見てみましょう。日本でとくに最近回復してきているのが、アジア向けの輸出、残業、生産財(原料・部品)の生産です。これは明らかに「アジアに部品を輸出している企業が回復してきている」ということを意味しています。
実は、アジア経済というのは世界の先行指標になっています。米国株のもっとも優秀な先行指標は韓国のKOSPI指数だという人もいます。「米国の景気回復」があるとまずアジアに注文が入ります。米国にとって最大の貿易赤字相手国は中国です。次に、アジア諸国はいわゆるキー・デバイスを日本メーカーに頼っているため、日本に注文が入ります。日本に注文が入ると、日本企業も景気が良くなり、従業員のボーナスも増え消費も増えるため、ますます景気が良くなるという循環ができます。しかし、現時点ではまだここまでに至っていません。
ここで米国経済が勢いを失ってしまうとどうなってしまうでしょうか?まず、アジアに注文のキャンセルが入ります...というように、上記とまったく逆の「負の連鎖」が起きるわけです。ITバブルの崩壊は、まさにこの「負の連鎖」の結果だったのです。
さて、日本の現況にもう一度話を戻します。仮に米国経済が崩れずにそのまま日本経済も恩恵を受けるとします。その時、日本経済は「ボーナスが増え、消費が増え、みんなハッピー」という状況になるのでしょうか?私は非常に厳しいと思います。なぜなら大半の日本企業は米国経済が盛り上がってももうそれほど儲からなくなっているからです。儲かるのは「キー・デバイス」を作っている企業、つまり「本当に競争力のある企業」だけでしょう。まったく競争力の無い「ゾンビ企業」の破綻はこれからも続くと考えねばなりません。多少米国の景気が盛り返しても、日本経済はそれほど盛り上がらないと思います。
それでは、米国経済が崩れてしまったらどうなるのでしょうか?はっきりいって日本には何も良いところが無くなります。また、2001年のような状態に戻るだけです。どうして円高になる理由があるのでしょう?
私は逆に、今度こそ日本を見放した資金が海外に流れると思っています。ペイオフ解禁により、銀行預金のリスクは確実に上昇しています。また、このまま景気がずっと低迷すれば、いつか日本は貿易赤字の国になり、海外から借金をしないと暮らせないような国になってしまいます。「日本は対外債権がたくさんあるから財政赤字がいくらあっても問題ない」という状態がいつまで続けられるかは分かりません。
「ドルは円に対して過大評価されている」という分析を最近よく見ますが、あれはあくまでも「昔の強かった頃の日本円と比較すると」ということだと思っています。円は10年前の円とはもう違う通貨になったと考えた方が良いと思います。円が買われる場面では着実に売っていくべきでしょう。
提供:株式会社FP総研