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1年前、真紀子は「小泉の妻となる」と宣言した。結果、「夫」は総理の座を射止めた。しかし、男は初心を忘れ、“口先男”となり、国民の信を失った。「妻」は去り、最大の敵となり、盟友・石原慎太郎はいきなり「倒閣」を口にした。ついに「死に体」となった小泉の次は「元妻」なのか、それとも「元親友」なのか。
「絶対にない」ことが起きる
小泉純一郎首相が力尽きた。もはや余力はない。4月20日、小泉首相は参院新潟選挙区補選の応援のため新潟市、長岡市を訪れた。熱狂的な歓迎を受けたという報道もあるが、これは演出によるものだった。警察関係者が明かす。
「約1年前の4月23日、24日にも小泉氏は総裁選のため新潟、長岡で演説しています。今回はこのときに比べて5割増しの観衆が集まりました。しかし盛り上がりという点では比較にならないほど、静かなものでした。自公が相当動員をかけたのでしょう」
発足1年で、小泉内閣の支持率は40%割れ寸前。「1年間」に関する評価では「評価しない」が57%にものぼった(4月23日発表の毎日新聞の世論調査)。
政権の生命線である支持率が急降下して、小泉首相からは就任当初のハツラツさも消えた。
「首相は最近、かなり疲れている。カメラの前では『小泉健在』を一生懸命アピールしているが、カメラがないところではグッタリだ。白髪もめっきり増えた。それでもいまだ飯島(勲)秘書官とともにワイドショーの中身には敏感になっていて、番記者の間では『ワイドショー担当秘書官』でもつくればいい、という陰口が出るほどです」(全国紙官邸番記者)
『週刊文春』で、せっかく時代小説家の池宮彰一郎氏と対談しても、目次での扱いは驚くほど小さい。もはや小泉首相の名では“売り”にならないということが、こんなところにも露骨に現れているのだ。
小泉首相はもはや「解散」に出る力も失っている。だが、それは「抵抗勢力」も同じこと。青木幹雄参院幹事長は井上裕前参院議長の「疑惑」で、野中広務元幹事長は「宗男疑惑」で、それぞれ力を落とし、往時の迫力はない。全国紙政治部記者は現在の情勢を次のように分析する。
「小泉は解散に打って出るかもしれない。ただ、そうなった場合、小泉がふたたび総理の地位に座ることはありえません。彼は過去の人。解散となれば政界大再編が始まる」
では、誰が首相の地位につくのか。もし仮にいま国民投票を行えば、次の総理は田中真紀子前外相だろう。2位は石原慎太郎東京都知事だ。
真紀子氏はアーミテージ米国務副長官との会談をドタキャンしたり、外務省職員を監禁するなど多数の問題を起こした「前科」がある。石原慎太郎氏は都知事であり、衆議院選挙で当選しなければ総理に立候補する資格がない。
自民党中堅代議士が言う。
「ふたりとも総理になる可能性はありません。なんと言っても自民党内にきちんとした支持基盤がないのだから。ポスト小泉と言うなら、麻生(太郎政調会長)、平沼(赳夫経済産業相)、福田(康夫官房長官)、高村(正彦前法務相)らをあげるのが常識的でしょう」
だが、ちょうど1年前、「絶対にない」と言われていた小泉氏が首相に選ばれた。もはや「プロ」の読みは当たらない。過去の経験からでは一寸先すら、読むことができない。「絶対にない」ことが起きるのが、いまの政治だ。
国民が求めているのは、政界リセットである。「再編」ではなく、一からやり直すことを望んでいる。前出の全国紙の政治部記者は「総理の条件」が変わったと、こう語る。
「小泉首相誕生以前、総理になる条件として最初に挙げられたのは最大派閥の支持を得ることでした。いま真っ先に言われるのは、国民にインパクトを与えられる人物かどうかということです。平たく言えば高い支持率を獲得できることが大事なんです」
こうして、考えていくと「田中真紀子」と「石原慎太郎」以外に総理になれる人物はいない。永田町にいながら、永田町的でない発想と感性を持ち合わせたふたりには、他の政治家にはないカリスマ性がある。
すでに、真紀子氏と慎太郎氏も、そして周囲もポスト小泉に向け、動き出した。
小泉のあとは小泉ではない
小泉首相は、党の行革推進本部メンバーと懇談した4月4日、
「寄ってたかって降ろそうとしても、俺は総辞職なんかしない。そのときは解散だ」
と、ついに解散を口走ってしまった。
4日の懇談では首相は赤ワインをがぶ飲みしており、当初酔った勢いで口が滑ったとの観測も永田町には流れていた。だが、そうではなかった。10日の今井敬経団連会長との懇談でも、首相は、
「辞めるときは選挙に負けたときだ」
と、「解散」が念頭にあることを示唆する発言を繰り返す。
与党内には「小泉は本気だ」との空気がジワリと広がった。小泉に解散する能力はないが、何をするか分からない人物ではある――自民党幹部の認識はこれでほぼ一致している。
いち早く動いたのが、自民党幹部の野中元幹事長や亀井静香前政調会長だ。両者が「決起」を働きかけた相手は、石原東京都知事である。
4月18日夜、3者は都内の料亭で会談をもった。会合の情報を聞き込んだマスコミが店から出てきた3者に直撃取材を試みたが、みな口が重い。会談の内容はなかなか外に漏れなかったが、本誌の取材により、当日、3者の間でかわされた会話の中身が判明した。
「純ちゃんは思い詰めると誰にも止められない。ブレーキがきかなくなる」
今後の政局について、まず亀井氏がこう懸念を表明した。
「神経質になりすぎているようやけど、万一のこと(解散・総選挙)も考えなければ」
と野中氏が応じる。
石原氏は持論の永田町批判を展開し、その上で、
「でもオレは自分から永田町にサヨナラした人間だ」
と口にする。すると、亀井氏が、
「救国の時にそんなことは関係ない」
と、石原氏の永田町復帰に水を向ける。石原氏はまんざらでもない様子で、
「なに言ってんだ。いつもそう言ってきたのが自民党だろう」
と応じた。
この秘密会談は何のためにセットされたのか。全国紙政治部デスクはこう読む。
「首相が解散に打って出た場合にそなえる作戦会議でしょう。もし解散権を行使する気なら、こっちは対抗馬に石原を立てるぞという牽制の意味もある」
政治評論家の伊藤昌哉氏もこう語る。
「政界・世論とも、小泉はもういいよ、という段階に入ってきた。ただ、自民党内には小泉の後継者がいない。『小泉のあとは小泉』というのが現状で、これが小泉の強みになっていた。しかし石原が新党結成に向けて動きだしたら、彼は間違いなくポスト小泉の有力候補になる」
解散となれば、石原氏の衆院議員復帰も可能となる。それはすなわち、最も有力な「ポスト小泉」候補が永田町に復帰することを意味する。「解散すれば、総理再選はない」と、野中、亀井両氏は小泉首相を牽制しているようにも見える。
では、肝心の石原氏の気持ちはどうなのか。最近の言動を追っていくと、石原氏は、永田町復帰を本気で考えていることがわかる。
3月28日に首相官邸を訪ねた石原氏は、会談後、記者団に対し、
「(東シナ海の)不審船を夏前に引き揚げる決定をしないなら小泉内閣を倒す」
と、物騒なコメントを出している。さらに4月21日には、『報道2001』(フジテレビ系)で国政復帰をたずねられ、
「奇襲攻撃するぞって奇襲するバカはいないでしょう。そういうことは瞬間的にやるものだ」
と述べた。
石原氏には、国政復帰にただならぬ意欲があると受け取ってよいだろう。
息子の石原伸晃行革担当相も、20日に和歌山県内で行った和歌山補選の応援演説で、こうバラしている。
「最近、父親が新党をつくると言っている。家族が一番迷惑する」
'99年4月に都知事に就任した石原氏は、いまだに高支持率を維持している。ちなみに昨年7月に読売新聞が発表した全国知事の支持率調査では、73%で5位だった。対する小泉首相は就任わずか1年で40%台前半まで支持率を落としている。石原氏は、まさに「ポスト小泉」の大本命に違いない。
真紀子‐菅‐小沢トリオだ
忘れてならない有力候補者がもう一人いる。言わずと知れた田中真紀子氏である。
このところ、秘書給与流用疑惑で逆風下にある真紀子氏だが、自民党内の疑惑解明は一向に進んでいない。というのも、真紀子氏に身内の「口利き疑惑」の存在を指摘され、小泉首相も怖くてうかつに追及できない状態だからだ。
「真紀子はこのままなし崩し的に騒ぎが収束することを狙って、首相の口利き疑惑や山崎(拓幹事長)の愛人疑惑などを口にしている。秘書給与に関しては、本気で追及しだすと、疑惑が永田町全体に広まりかねない。だから首相も自民党幹部も、ホンネではこのままウヤムヤで終わらせたいんだ。山拓も『真紀子問題にはあまりかかわらないようにしよう』と話している。真紀子問題は党内、官邸ではアンタッチャブルなんだ」(自民党幹部)
官邸・自民党がこんな状態だけに、真紀子氏は相変わらず意気軒高だ。官邸・与党は新潟補選(4月28日投票)で、何とか真紀子氏に自民党候補の応援をと願っていたが、当の真紀子氏はニベもなかった。真紀子氏に近い新潟県議があきれる。
「『使命が終わった政権、政党の応援なんかするわけがないでしょ!』と本人は言っていました。小泉首相のことは完全に見切っています」
長岡の真紀子事務所には、自民党候補のポスターすら貼られていなかった。
最近、真紀子氏は知人にこんなことを言っている。
「(秘書疑惑は)もう政倫審に説明したから終わりよ。(政倫審には)自分の会社の社員なんだから、何の問題もないと言ってある。それより国会会期中に政変になるかも知れないわよ。小泉首相は解散に打って出る可能性がある」
はからずも、真紀子氏と亀井氏は「小泉首相が解散を仕掛けるかもしれない」という点で、同意見なのだ。そして、解散を前提に、真紀子氏も、石原氏同様、ポスト小泉をにらんで、虎視眈々と次の一手を考えている。
「真紀子は、民主党の菅直人幹事長、自由党の小沢一郎党首、それに自民党の一部を巻き込んでの政界再編を狙っている。彼女には人気なら誰にも負けないという自負がある。日本初の女性宰相の可能性は十分ある」(自民党代議士)
真紀子―菅―小沢トリオならば、国民的人気を得ることも難しくない。
石原氏をポスト小泉に担ごうと水面下で動き回っている亀井氏は、オフレコでこう漏らしている。
「純ちゃんは性格からして絶対に総辞職はしない。追い込まれれば解散・総選挙に打って出る。そのときは真紀子は新党をつくるだろう。一方、石原も新党を結成する。民主党の一部の浮いたやつ何十人かは真紀子新党に馳せ参じる。自民党からも10人以上が付いていくだろう。石原新党には、自民党の若手が集まる。したがって次の総選挙は自民党vs.民主党vs.真紀子新党vs.石原新党の戦いになる」
政界再編を超えた政界リセット。そのボタンを押すのが小泉首相の最後の仕事だ。そして、リセット後に政界の中心にいるのは真紀子か慎太郎のいずれかである。