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「当行が今期から導入することを決めた“新貸出制度”の最大のポイントを挙げるとすれば、銀行として今まで以上にリスクテイクしていこう、ということになるでしょう−」
三井住友銀行の担当幹部がこう言ってみせる。
昨年11月、西川善文頭取が委員長を務める、三井住友銀行の「業務改革委員会」では、融資取引の全面的な見直し作業に着手したのである。一連の作業の結果、昨年度末になって“新貸出制度”が完成し、新年度からその導入が図られることになったのだ。
「そうは言っても、その本格的な導入は5月からということになるでしょう」(前述の担当幹部)
さて、この“新貸出制度”の具体的な中身だが、以下に示すいくつかのポイントによって構成されている。
まず、同行の貸出先企業は、その信用力によって大きく5段階に区分される。
最優先企業は“ランク1”に区分され、この企業群に対してはこれまでと同様にプライムレートをベースとした貸出金利が適用されるが、“新貸出制度”ではここで適用される貸出金利−つまりプライムレートについては基準金利としては位置付けられていない。
三井住友銀行では新制度の中で“標準金利”と呼ぶ基準金利を設定し、“ランク3”の企業群にこの金利を当てはめている。
そして、この“標準金利”は、「調達コスト+経費+信用コスト+資本コスト」という数式によって求められる。
ここで言う“調達コスト”とは、三井住友銀行が資金を調達する際に要するコストで、経費は「物件費+人件費」ということになる。
これまで銀行業界は、貸出金利を設定する際に、「調達コスト+経費+利ザヤ(利益)」という算定式を用いてきた。
「つまり、従来の貸出レートの中に、企業の信用リスクというものは全く反映していなかった」(三井住友銀行担当幹部)
このため各銀行は、不良債権処理コストを年間収益の範囲内に収めることが難しくなってしまったのである。
その意味するところは、銀行のビジネスモデルの崩壊に他ならない。
そこで“新貸出制度”では、この信用リスクをも加味する形で貸出レートが設定される。
そして前述の算定式の中で“資本コスト”と称される部分が、銀行にとっての期待収益となる。
「我々が調査したところによれば、米銀の場合、“経費+信用コスト+資本コスト”が3−4%程度、欧州系の銀行の場合は2.5%前後になっているのです。ところが邦銀の場合、1.5%前後と低水準にとどまっているのが実情なのです。この“差”が、邦銀と欧米の銀行の収益力の差となっているのです」(三井住友銀行担当幹部)
そしてこう続ける。
「逆に言えば、これまで邦銀はリスクをとらない代わりに、リターンも得られなかった、といえるでしょう。この“新貸出制度”が導入されることで、当行の融資を利用できる企業は飛躍的に増加していくはずです。その結果、当行の収益力も向上することになるのです」(前述同)
三井住友銀行の新しい“貸出制度”は要注目だ。