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大手ハイテク企業7社の2001年3月期決算が出揃った。円安が収益を押し上げたソニー<6758>を除けば、日立製作所<6501>や松下電器産業<6752>、富士通<6702>など、各社歴史的な赤字決算に陥り、7社合計の最終損益はおよそ2兆円に膨らんだ。
しかしそんな“過去”の赤字額よりも、注目しなければならないのが今期の業績動向だ。ミクロ経済だけでなく、わが国のマクロ経済の行く末をも占う大手ハイテク企業の業績だけに、各社がどんな回復シナリオを描いているかが最大の焦点。それを見極めるポイントはわずか3つに過ぎないが、検証結果をみると、どうやら“実体なき業績回復”という道筋が見えてくる。
●ポイント1〜業績の底入れは本物か?
まず確認しなければならないのが、世界経済を不況のどん底に陥れた半導体などデバイス部門が底入れしたかどうかだ。現在のIT不況は別名“半導体不況”と言い換えても差し支えない。経営に対する半導体依存度が高い東芝<6502>では前期、電子デバイス部門で営業損益が1763億円の赤字を記録したほか、日立が1636億円、富士通が1093億円のそれぞれ大幅な赤字に。この半導体部門の回復こそが業績向上の最短距離にあるといえるが、今期の見通しを見ると次第に底入れ感が広がりつつある。
弱気の読みに転じた富士通こそ、今期はデバイス部門で300億円の赤字と慎重だが、他社は概ね底入れを強調。NEC<6701>の松本滋夫専務が「半導体は前期の第3・四半期が底。今期はデバイス部門で140〜150億円の黒字化が見込める」と言えば、日立の八木良樹副社長は「下期以降に回復基調へ」をアピールする。米国における半導体回復は日本市場にも確実に押し寄せつつある今、半導体の底入れがハイテク企業再生の最大の特効薬だ。
●ポイント2〜リストラは完了か?
前期、業績の読み違いから各社が慌てて作成したのが「リバイバルプラン」。
事業構造改革費として富士通が4170億円、NECが3700億円を計上するなど各社巨額の特別損失を強いられたが、今期は「1ケタ」低いレベルでのリストラを想定している。
前期1113億円の構造改革費を計上した東芝では今期、すでに200億円の特別損失を織り込んでいる。富士通でも「300〜400億円規模のリストラはあり得るが、大リストラは完了した」(高谷副社長)と、事業縮小に伴う人員削減や固定資産の売却などは出し尽くした感もある。今期はあくまでも小規模で補足的な追加リストラに止まりそうで、現代版「負の遺産」の清算は、数字上、前期でほぼ完結したことになる。
●ポイント3〜業績回復は本当か?
経営における最大の下ブレリスク要因である半導体部門が回復基調にあること。そして、リストラ策が一息ついたことにより、企業業績は改善に向かうのは当然の成り行きだ。大和総研の調べによれば、今期の電機セクター全体の営業利益は、「前期に比べおよそ3兆円増加する」(企業調査本部)とし、“超V字回復”が見込まれている。
実際、本業の儲けを示す営業利益で、ソニーが前期比2.1倍となる2800億円を、松下電器が1000億円の黒字転換を予定するなど、業績数字だけみればハイテク企業の業績は完全回復する可能性は高いといえる。「今期の黒字化は社会との契約」(中村邦夫社長)と、復調への鼻息は荒く、最終損益でみても富士通のゼロ予想以外の6社は軒並み黒字転換を計画している。
●でも結果は数字の遊び〜「拡大なき成長」「実需なき増益」
わずか1期で業績が回復するケースは「歴史的に見ても極めて異例」(野村証券金融研究所)といわれる今期のハイテク企業の業績だが、これで安心とはまったく言い切れない。この結果はあくまでも数字のトリックだからだ。ひど過ぎた前期の反動であり、営業利益の急増も人件費圧縮や不採算事業の切り捨てなど、各種リストラ効果が顕在化した結果に過ぎず、売上高は頭打ち状況が続く事実に変化はない。いわば「拡大なき成長」あるいは「実需なき増益」といえ、依然としてハイテク企業が危うい岩盤の上にいることを示している。
肝心の米国経済も設備投資が思うように進まないなど先行き不透明で、「輸出頼み、為替頼みの経営から脱却しなければ、日本のハイテク企業にとって本当の回復は来ない」(大手証券)。現在のままでは好不況の「対角線上を行き来する経営」にほかならず、ハイテク企業の憂鬱は当分解消されそうにない。
○URL
・「過去最悪」の決算〜富士通とNEC、甘い読みで大きなツケ
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/25/20020425172517_04.shtml
・再修正の次は再々修正?〜ハイテク業界の懲りない面々
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200110/04/20011004093011_45.shtml
[木幡和美 2002/04/30 12:50]