「ニューズウイーク日本版 5・1/8」は、P.50から『「奇跡の急成長」はウソ』というタイトルを掲げ、“成長率は半分で失業率は危機ラインを突破”“世界中の企業があこがれる「夢の大市場」は統計のまやかしだった”という記事を掲載している。
基本的には、中国の経済統計は整備されていないだけではなく、地方から上がってくる数字は政治的な思惑でつくられているものであてにならないものであり、正確だと思われる統計数値や社会状況に照らせば、公表値をずっと下回るものという内容である。
一方で、97年以前は、GDP統計で急成長していたサービス産業を無視していたので、政治的な水増しがある程度相殺される可能性があったとも見ている。
また、せっ江省(上海近く)のように民間部門の急成長を目立たなくするために低い数字を報告したり、広東省などのように裕福な省は、中央への納税額を減らすために低い数字を報告しているとも指摘している。
[ニューズウイーク推定値]
● GDP成長率(2001年):公式7.3% 非公式3−4%
● 財政赤字対GDP比(2001年):公式3% 非公式10%
● 都市部失業率(2001年):公式3.6% 非公式8.5%
● 軍事支出(2001年):公式170億ドル 非公式(最大)850億ドル
● アジア危機後の98年と99年には2.2%と2.5%のマイナス成長だったかもしれない
● 中国の学者が算定した値として、農村部失業率:7.6%、都市部で8.5%
● 中国の政府債務は、中国人民銀行行長の試算によると、公的年金の積立不足・地方政府債務・主要銀行不良債権を含めると対GDP比で60%近くになる。
● 中国の貯蓄率は40%
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★ 中国も日本と同じくデフレ状況にあるので、そのなかで7%前後の経済成長を遂げたことは脅威だし、これまで類を見ない経済現象である。
これは、「ニューズウイーク」が提示している3−4%の成長でも、脅威の度合いは下がるが同じように言えることである。
中国経済は、総体的な成長を遂げているわけではなく、輸出依存で沿海部中心に成長を実現していて、内陸部は経済成長から取り残されたままだろう。
このような意味で、「ニューズウイーク」の指摘は真実性が高いと考えている。
沿岸部は10%前後の経済成長率で、内陸部は大規模な財政支出によっても2%に到達するかしないかの経済成長率ではないかと見ている。
中国経済が総体的な成長を遂げられるかどうかは、国有企業のリストラをどれだけ短期間で終わらせるかが鍵だろう。
リストラで発生する失業者の問題をなんとか爆発させず、生産設備の更新に必要な資金をスムーズに調達できるかどうかがポイントである。
このためには、中国企業の輸出拡大を計り、徴税の強化を行うとともに社会政策を充実させなければならない。
国有企業のリストラが成功しなければ、都市部で社会的騒擾が増大するだけではなく、沿岸部と内陸部との経済格差もさらに広がり、中国の政治的分裂が現実のものになる可能性がある。
しかし、成功は中国が巨大輸出国家=「世界の工場」になったことを意味するので、日本経済にとんでもない打撃を与えることになる。
※ 参考書き込み
『同じ「デフレ状況」下で“縮みゆく”日本経済と“膨らむ”中国経済』
http://www.asyura.com/2002/hasan9/msg/338.html