政府は二十五日、石油の国家備蓄を原油価格高騰など世界経済に悪影響を及ぼす恐れがある場合にも、機動的に放出できるよう見直す方針を固めた。これまで国家備蓄放出は原油供給不足などの非常時に限定しており、備蓄政策を転換することになる。
五月二、三の両日に米デトロイトで開かれる主要八カ国(G8)エネルギー担当相会議で平沼赳夫経済産業相が表明、各国に賛同を求める。閣僚が公式に国家備蓄の柔軟な運用に言及するのは初めて。
パレスチナ情勢の不安定化で原油の安定供給に不透明感が増していることから、原油価格が最近、昨年の米中枢同時テロ以前の高値の一バレル=二七ドルに並ぶ水準に高騰。このため、短期的に市場を沈静化させる狙いもあるとみられる。
国家備蓄の運用などを定めた「石油の備蓄の確保等に関する法律」は石油の放出を供給が不足するか、不足する恐れがある場合に限定。政府はこれを変更し、価格高騰時などにも対応できるよう柔軟な活用を目指す。
平沼経産相は会合で、緊急時のエネルギー供給の安定確保にG8各国の協力が不可欠であることを強調、協調体制の強化を訴える方針だ。最近では、米国が二〇〇〇年秋に原油価格抑制のため、戦略石油備蓄を放出したことがある。
今後、石油需要の急増が予想されるアジア地域で、域外へのエネルギー依存が進むことを指摘。日本が中心になって備蓄体制の整備を支援し、アジア地域での緊急時の対応能力の向上を図っていく方針も表明する。