カジュアル衣料のユニクロブランドが迷走を続けている。低価格と高品質をうたい文句にアパレル業界を席巻し、「ユニクロ現象」を巻き起こしたファーストリテイリング<9983>だが、既存店販売実績は6カ月連続でマイナス、ここ3カ月については30%を超える減少幅で、凋落傾向に全く歯止めがかからないままだ。今8月期業績の修正記者会見では、自社の成長率鈍化について柳井社長自らマスコミ批判を打ち出すなど、デフレ時代の寵児だった同社は急速に方向感覚を失いつつある。ユニクロは一体、どこへ行こうとしているのか―。
●「販売低迷はマスコミ報道にも責任が」・・・
「既存店販売実績の低迷はマスコミの報道にも責任がある」。業績修正会見での柳井社長の発言にあきれた記者は少なくないだろう。小売店の販売実績について、個人消費低迷などの外部要因を挙げる例は多いが、マスコミの報道で売上が落ちたという経営者はそう多くはない。同社のマスコミに対する姿勢に疑問符がついたのは、実はこれが初めてではない。1回目の業績修正会見も東京証券取引所記者クラブへの申し込み時には「新規事業について」という内容で設定した。しかしふたを開ければ業績修正発表で、その時点では食品事業といっても“トマトを売る”といった程度の雲をつかむような話。そのこと自体は違法でもなんでもないが、上場企業として“トマトのおまけ”に業績下方修正を発表するといった手法に首を傾げる関係者は多い。
同社については小売・流通関連企業を取材領域とする東京商工会議所記者クラブに加入申し込みをしたが頓挫しているという経緯もある。関係者の話によると、同社が加入申し込みのため設定した時間に幹事社が待っていたものの、連絡もなく30分遅刻。ファーストリテイリング側の担当者が役職者でなかったこともあり、幹事会社がいったん受付を拒否し、そのままになっているという。
●生鮮食品は短期で収益貢献することは考えにくい
他愛もない話だが、同社が記者クラブへの加入申し込みに動いたのはちょうど、ユニクロブームにかげりが見え始めたころ。ユニクロの意図は分からないが、環境の悪化にともない、これまで疎遠だったマスコミとの関係を構築しようとしたと考えられなくもない。業績修正会見で柳井社長は「今のビジネスモデルをぶちこわす」とあくまで強気の発言に終始した。しかしブームの醸成、低コスト国での大量生産といったビジネスモデル自体、それほど目新しくはなくなっている。
海外に目を向ければ大手スポーツ用品のナイキが、やはり低コスト国での計画生産、プロモーション主体の商品ブランド構築で急成長し、ブームの終焉とともに急降下した例もある。柳井社長が頻繁に言及する食品事業については、確かに国内では最も合理化が進んでいない分野。生産農家まで巻き込んだ仕組みをつくれば一定の成果が得られる可能性はあるが、生鮮食品の世界はその他の商品カテゴリーとはシステムが全く異なっている。短期的に収益に貢献することは考えにくく、ユニクロの憂鬱は当分の間、続きそうだ。
(神山 純)
・迷走するユニクロ〜新規事業・・・実は業績下方修正の発表
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200201/09/20020109111502_43.shtml