10年利付国債入札を無難に終えた債券市場では、米格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスによる日本国債格下げ懸念や、今週末の衆参補欠選挙などの不透明要因を抱え、動きづらい状況が継続している。投資家の余資運用ニーズによる押し目買い需要が相場の下支え要因との見方が聞かれるものの、現状レベルでの積極的な債券買いは見込みづらく、市場は格下げの“Xデー”待ちの状態になっている。
今回の10年債入札は、市場の事前予想通り、業者中心に無難な結果となった。最低落札価格は100円15銭で、テールは2銭。また、応札倍率は2.33倍となった。無難な入札となった背景について、市場では、「今回の落札は業者中心。イールドカーブ上は他のセクターに比べ割安感が出ていることもあり、イールドカーブで勝負に出た業者もいるようだ」(信託銀)との指摘が聞かれている。
ただ、入札後の業者間取引では、「ある程度予想していたが、投資家の動きも鈍いようであり、スローな出足となっている」(信託銀)との指摘が聞かれており、「ムーディーズによる日本国債格下げ懸念や、週末の衆参補欠選挙などのイベントリスクがある中で、投資家サイドはあえて動く必要がないという感じだ」(UFJキャピタルマーケッツ証券・シニアストラテジストの道家映二氏)という。
このように、現在の債券市場は、「格下げのXデーをにらみ、市場は宙ぶらりんの格好だ」(みずほインベスターズ証券・調査部次長の玉田修氏)という。
注目される格下げ時期については、「週内の警戒感も強い」(都銀)が、メリルリンチ証券・調査部チーフ債券ストラテジストの小林益久氏は、今週末28日の衆参補欠選挙がポイントと見る。
同氏によると、「格付け機関が格下げする場合は、確固たる理由をもとに行うはずだ。仮に、今度の選挙で衆参両院の自民党候補が敗北することになれば、小泉政権に対する求心力の低下により、政治が不安定化すると見られる。その場合、構造改革進展が遅れるとの見方から、ムーディーズが2ノッチの引き下げを行う可能性がある」との見方を示している。
ただ、仮に、ムーディーズが2ノッチの格下げを実施したとしても、市場の反応は、限定的なものにとどまる、との見方が少なくない。ここ1カ月の債券市場は、政治スキャンダルや小泉政権の支持率低下、米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)による日本国債の格下げなどの悪材料が出ているにもかかわらず、金利が若干低下しており、そうしたことも好需給を裏付ける形となっている。住友信託銀行・市場金融部市場営業室調査役の扇本晃一氏は、「多くの投資家は、格付け機関の格下げを嫌気しているよりも、押し目を期待して格下げを待っている」と分析する。
他方、メリルリンチ証券・小林氏は、「仮にムーディーズが2ノッチ格下げを行った場合、日本国債のシングルAは過去に経験のない世界であるとともに、他の格付け機関が追随する可能性もある。その場合、信用リスクに対して敏感なアジアの中央銀行の判断も相場に影響を与えると想定され、海外勢の動向が気になるところだろう」と述べている。