総合金融最大手の米シティグループなど国際展開する7銀行が、アルゼンチンに関連し被った損失は合計 85億ドル(約1兆1000億円)に上ることが、第1四半期(1−3月)決算の分析結果から明らかになった。各行が1月に発表した額を6割上回っている。
帳簿上の2001年末時点のアルゼンチン向け融資残額が236億ドルあったことを考えると、アルゼンチン・ペソの切り下げと同国政府のデフォルト(債務不履行)による損失額は、今後数カ月でさらに膨らむとアナリストや投資家はみている。
シティグループのワイル会長は先週、アルゼンチンに絡む損失は累積で22 億ドルと、2001年12月31日時点の4億7500万ドルから拡大していることを明らかにした。スペインの2大銀行は合わせて32億ドル、米フリートボストン・ファイナンシャルは13億ドル、英HSBCホールディングスは11億ドル、J.P.モルガン・チェースは4億1100万ドルの損失を出している。カナダのバンク・オブ・ノバスコシアは3億7700万ドルの損失を報告している。
デフォルトの影響
7行のアルゼンチン資産は融資を含め、1ペソ=1ドルの固定相場だった 2001年12月31日時点で400億ドルだった。1月の切り下げ後、ペソ相場はその3分の1に下落している。
大手格付け会社の米ムーディーズ・インベスターズ・サービスが1月に発表したリポートによると、同7行を含むアルゼンチン銀行システム全体での損失は、540億ドルに上る可能性がある。
ウェルズ・キャピタル・マネジメントの金融サービス・ポートフォリオ・マネジャーのステッド氏は「融資の再調整が必要となるだろう」と、全額返済は難しいとの見方を示している。
最悪期は脱したか
銀行は、アルゼンチン危機の最悪期は過ぎたとしているが、アルゼンチン政府は預金の引き出し制限を解除していない。裁判所が預金引き出し制限は違憲と判断したことを受け、アルゼンチン市民は先週1日で約3億5000万ペソ(約 145億円)の預金を引き出した。この司法の判断を受けて、政府は現在、無期限に銀行を閉鎖している。
ムーディーズのリポートの共同作成者で金融機関シニアアナリストのデル・カシノ氏は「危機は終わっていない」と指摘している。