「金融庁が、大手銀行に対して実質的な“検査官常駐体制”を敷く方針を固めているようだが、これは、“公的資金再注入論”を封じ込めるのと同時に、銀行に対する支配力を強めることを目的としたものと思って間違いないだろう。ここへ来ての金融庁の権限拡大には、目を見張るものがある。行財政改革に逆行して膨張しつつあるのは、霞ヶ関では金融庁だけだということに注目すべきだろう」
官邸関係者がこう指摘してみせる。
金融庁は、平成14年事務年度(14年7月−15年6月)において、主要な金融グループ、銀行に対して“検査官常駐体制”を敷く方針を固めた。
この体制下に置かれるのは、みずほ、三菱東京、三井住友、UFJ、りそな(大和・あさひ連合)、中央三井信託、住友信託。
「この“検査官常駐体制”とは、金融検査官を年間を通して大手銀行に対し、それこそ頻繁に“訪問”させることで、常時チェック体制をとり、実質的な常駐化を図る、ということなのです。ある意味で前年度後半に実施した“特別検査”の延長線上にある、と言っていいでしょう」(金融庁幹部)
このコメントにもあるように、金融庁の狙いとしては、特別検査の対象となったような特定大口融資先が期中にマーケット評価などを大きく下げた場合に、スピーディーな対応を行うことにある、とみていいだろう。
「いずれにしてもこうした体制が敷かれたことで、金融庁が銀行を通じて個別企業への支配力を強めていくことは間違いありません。つまり、問題企業の命運は完全に金融庁に握られてしまうことになるのです。不良債権処理の大義名分の下、金融庁がそこまで口出しをするのはあまりにも異常です−−」(大手都銀役員)
このコメントに代表されるように、こうした“検査官常駐体制”に対して銀行業界は警戒を強めつつあるのが実情だ。
前述の官邸関係者が言う。
「金融庁サイドは、こうした体制を敷くことについて、米国ではすでに同様の体制がとられている、と説明している。しかし米国の場合、そうした検査にかかる諸費用は銀行サイドの負担となっているはずだ。なぜ、日本では国民の血税を使ってそこまで銀行の面倒を見なくてはならないのか、その辺の説明が不足している−−」
いずれにしても金融庁はまったく独自の判断で、検査体制の強化に名を借りる形で、銀行支配、企業支配を強めつつあるのが実情だ。
「とはいえ、不良債権処理が着実に進みつつあるのかというと、どうやらそうでもないようだ。今回の“特別検査”についてもそうだが、ただ単に問題を先送りしているにすぎない、というのが実情のようだ。仮に検査官を常駐させたとしても、こうした状況に変化はないだろう」(政府関係者)
いずれにしても金融庁の権限は強化されつつあるのが実情のようだ。
「ところが、その金融庁に対しては誰もチェックが効かなくなってきていることも事実なのです。まさに金融庁は“関東軍”となりつつあるのです。金融庁は、一連の検査情報を独占し、公開しようとしないため、その行動についてはチェックのしようがありません」(同)
金融庁は、政府部内でも“鬼っ子”的存在になりつつあるようだ。
2002/4/22