「日本ではデフレが終息するという目立った効果はまだ見られないが、金融政策にはタイムラグがあるため、その成果を待っているところだ」―。米財務省高官は、19日の先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)開催を前にこう語り、日本銀行の金融政策に理解を示した。
国際通貨基金(IMF)は18日に発表した世界経済見通しで、日銀に対して、「積極的に金融政策を活用すべき」と、一段の量的緩和を求めていた。記者団からこのIMF報告の感想を求められた米財務省高官は「日本銀行は既にその政策に打って出ている」と答えた。
オニール米財務長官は1月の訪日の際、日本記者クラブで、「インフレと同様、長期化するデフレは貨幣的現象であり、金融政策に反応する」と述べ、日銀に一段の量的緩和を要請していた。米政府は自国の中央銀行である米連邦準備制度の金融政策には絶対に介入しない。オニール長官が日本の政策に介入しないという公約を破ったうえ、さらに政府から独立している中央銀行に介入するという2重の禁を犯したのは、3月危機を強く恐れたからだ。
マネタリーベース急増で日銀への風圧和らぐ
その3月危機をどうにか回避。さらに、米財務省が重視していた日本のマネタリーベース(日銀当座預金と日銀券の合計)が前年比30%増という驚異的な伸びを示すに至り、日銀への風圧はひとまず和らいだ格好だ。米財務省高官は、昨年3月19日に日銀が初めて量的緩和に踏み切ったことに触れて、「日本銀行はちょうど1年前から量的緩和に乗り出し、物価もゼロないし、それ以上になるまで政策を継続するとしている」と指摘。日銀が物価をターゲットに量的緩和を「積極的に遂行している」と断言した。
日銀は金利がゼロ%まで低下、金利政策が限界に達したなかで、デフレを克服するという困難な使命に直面。量的緩和という未踏の金融政策を、副作用を避けながら、慎重に進めてきた。米政府からは、日本銀行はケチャップでも何でも購入してマネーを拡大できるという暴論も聞かれたが、ここにきて、マネタリーベースが急速に伸び、米側も日銀に対する見方を変えざるを得なくなったようだ。
日銀に対し、一段の金融緩和を求める日本政府や政治家の圧力は、デフレの責任を日銀だけに押し付けることにより、財政政策や構造改革など金融政策以外の重要な対策を遅らせる免罪符となってきた。ここにきて、米財務省が日銀の政策に理解を示し始めたことで、日本政府や政治家は、金融政策に責任を転嫁することが難しくなりそうだ。
塩川財務相は今回のG7で、減税を積極的に推進する決意を表明した。これも、米国の関心が日銀の金融政策から離れ、日本政府の経済政策に絞り込まれてきたことと無関係ではないだろう。