日本国債の格付けが先進国の中では最低になりました。政府関係者はこの格下げに否定的なコメントを出しているけれど、本当に国債を購入しても大丈夫なの? (質問)日本国債の格付けが下がっていると聞きますが、国債を買っても大丈夫なのでしょうか? (回答)格付けは、民間の格付会社が独自の判断で行っているものであり、日本政府として、各社の判断の是非についてコメントは致しません。
また日本国債の格付けが下げられました。米国の大手格付け会社、スタンダード&プアーズは4月15日、日本の外貨建て及び円建て長期国債の格付けを現行の「AA」から「AAマイナス」に1段階格下げとしました。今回の降格で、日本国債の格付けは先進7カ国(G7)では、単独で最も低いものとなり、キプロス、マルタ、チェコと同格となりました。
今回も過去の格下げの時と同じく、政府関係者からは格下に対し「民間機関が勝手に出している格付けなので関与しない」、あるいは「実状を反映していない」、といった否定的なコメントが多く出ています。財務省のホームページを見てみると次のような質疑応答が掲載されていました。
いずれにしても、国債は、その利子や償還元本の支払いを日本国政府が約束するものであり、あらゆる金融商品の中で最も信用力が高いものとして、安心してご購入いただけます。
とあります。
確かに通貨を供給する権限を持った日本の政府が円建ての債務の支払不履行に陥る可能性は非常に低いと思われます。従って厳密には債券の発行者が債務不履行となるデフォルトリスクは低いかもしれません。しかし国債を購入する投資家にとってもう一つの大きなリスク、即ちインフレリスクを考えると我が国の置かれている現状は決して楽観視できるものではありません。
最近、景気対策・デフレ対策からインフレターゲット導入といった話がちらほら聞かれます。巨大な財政赤字に苦しむ政府が過去より一般的に用いる手段はインフレの促進による公共債務の軽減化です。従って、政治改革、構造改革、景気回復が達成できない場合、インフレのリスクが高まってくる訳です。今回の格下げもこの点に焦点が当てられています。
債券の保有者にとって発行体が債務不履行に陥るリスクも重大ですが、満期に償還された債券の購買力が利回りを上回るインフレの加速によって低下してしまえば実際には損失を被ることになってしまいます。
これまではデフレが進行した結果、表面利率は低いものの、購買力の維持・増長の点からは日本国債は悪い投資商品ではなかったのかもしれません。しかし将来については慎重に検討を行う必要があり、今回の格下げの警鐘に注意を払う必要があるのではないでしょうか。
※本稿は私個人の意見であり、アイエヌジー投信(株)の見解またはそれを代弁するものではありません。
アイエヌジー投信(株) チーフインベストメントオフィサー 水野秀昭
提供:株式会社FP総研