IBMの大幅下方修正に続き、GEも非常に内容の悪い決算を発表しました。ヨーロッパや日本の景気も今やアメリカ次第。米企業が不振だと世界経済も不振!?
■ 1−3月期の決算はやっぱり弱い
今週から決算発表が本格化していますが、先週のIBMの大幅下方修正に続き、GEが非常に悪い決算を発表しました。11日(木)に発表された同社の決算は、売上が市場予想の327億ドルを大幅に下回る305億ドルで、景気回復に伴う「売上主導の収益回復」を期待していた株式市場に打撃を与えました。同社の株価は15日までに14%の急落です。同社はグループ全体の収入の4割を占める金融部門、GEキャピタルの7000人に上る従業員カットも発表しました。これは昨年末現在で9万1千人いる従業員の約8%に当たり、かなり大きな人員削減です。
また、15日(月)に発表されたシティグループの決算も芳しくありませんでした。同社の業績は子会社売却益等の特別利益を除いたベースでは、アナリスト予想よりも一株利益が5%あまり低いものでした。現在のような低金利かつ長短金利差がかなり大きい環境下では、銀行業務は非常に大きな収益を産むはずです。にもかかわらず、業績が予想よりも悪いのはこの先利上げの可能性が高いことを考えれば不安でしかありません。
■ ハイテク決算はまずまずだが株価は上がらず、弱気相場
逆にハイテク企業の決算はまずまずです。16日に発表されたインテルの決算は予想通りの5四半期ぶりの増収増益。テキサス・インストラメンツ(TI)の決算は赤字ながら、4−6月期見通しは黒字転換で、かつ、市場予想を上回ると発表し好感されました。ノキア、モトローラ等の携帯電話メーカー向けが回復しているようです。しかしながら、市場の反応は今のところ芳しくありません。どうやら、株式市場全体のセンチメントは売り要因には敏感に反応しますが、買い要因にはそうでもないという、典型的な弱気相場のモードです。
■ GE、IBMがダメ、部品会社が好調だということは...?
銀行などの金融セクターはともかく、部品メーカーが好調で、総合ハイテク・電器メーカーが不調というのは納得がいきます。結論は「まだまだ先行きに強くなれない」ということです。
1−3月期の半導体市況を見ると、256MB DRAMの価格は2倍以上になっています。とはいっても、昨年1月から比べると1/3の水準に回復しただけです。256MB DRAM価格は2001年初が24ドル程度、これが11月までにわずか2ドル程度に下落、現在は8ドル程度にまで上がってきているというところです。この推移を見れば、1−3月期の半導体関連企業の業績が良いのは当たり前です。それ以前は本当に悲惨でした。「ハイテクが良い」、「半導体が分が良い」というのは、あくまでも「最悪期が過ぎた」という意味でしかありません。この先良いのかどうかは、まったく分かりません。それは、PC、サーバー等の最終需要がどの程度伸びるかにかかっています。
しかしながら、その最終需要は心もとない状態が続いています。IBM、GEの業績不振はそれを如実に表しています。こうした、企業向け売上の高い企業の不振は、米国経済全体の企業設備投資の不振を色濃く反映したものです。つまり、マクロ経済全体の中での企業部門は依然として不振なのです。TIの「携帯部門が伸びている」というのも先行きが明るいことを意味しません。携帯電話は中国などの一部の国を除き、あくまでも「在庫調整がようやく終わった」というところです。けっして先行きが明るいわけではありません。
■ 米国の企業部門が不振だと世界経済は全て不振!!
米国の企業部門の不振は、単に米国だけの問題ではありません。世界経済は、ますます米国一局主導の様相を強めています。
欧州諸国は2000年冬からの景気後退で、米国が崩れるといかに自国がおかしくなるかを知ってしまいました。そしてさらに悪いことに、景気が悪くなると財政収支がすぐにおかしくなる、つまり税収の安定度が非常に低いことが分かってしまったのです。欧州では1月に欧州委員会(EUの行政執行機能を持つ)がドイツ、ポルトガルに対して、財政赤字がユーロ統合基準である3%を上回るリスクについて警告を発しましたが、これは「米国がおかしくなると欧州では通貨統合の枠組みすらリスクにさらされる」事を意味します。
また、日本は米国主導の色彩がもっとも強い地域です。内需はまったくの不振です。最近になってようやく米国市場向けの輸出が増えたことから、輸出企業の残業が急増し所得環境が良くなってきていますが、今年の春闘はベアゼロ、定昇込みでも史上最低の上げ幅と長期的に所得環境が改善する見通しはまったく持てません。むしろ、構造改革を進めていかなければならない環境下で、中長期的に所得環境は厳しいと考えておいた方が良いでしょう。米国が崩れれば日本はより大きく崩れるという状況は今後長く続くでしょう。
これは、実はアジアでも同じです。アジア諸国の成長は、アジア危機により経常赤字がいかに大問題を引き起こすのかが分かって以来、輸出が鈍化する場面では成長も止まるという展開になっています。それ以前は輸出で外貨を稼がなくても海外からの借入や投資があれば国内経済の成長にあてることができました。しかしながら、今ではそれはできません。輸出以外での成長ができなくなってしまった今となっては、他国頼み、すなわち世界経済の中心である米国主導という形になってきています。
以上のように世界経済は全て米国次第です。今、アメリカ人は何を欲しがっているのでしょうか?テロ後、アメリカ人のライフスタイルは大きく変わったという記事がたくさんありますが、本当のところはどうなのでしょうか?世界経済は大きな曲がり角にいるのではないでしょうか?
提供:株式会社FP総研