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東京市場では、大型連休前にもムーディーズ・インベスターズ・サービスが日本国債の格下げを発表するのではないか、との観測が出ている。また、格下げが現実のものとなれば、複数のアジア系中銀が日本国債を売却するだろう、との見方も浮上している。シングルＡ格への格下げはすでに織り込み済みで大きな影響はない、との楽観的な声が市場の一部で聞かれる一方、アジア系中銀が実際にまとまった額を売ってくれば、長期金利が上昇するだろう、との見通しも出ている。押し目買いを狙っている国内の投資家にとって、アジア系中銀の動向がかく乱要因になる、との指摘も出ている。
円債市場では、「４月末から始まる大型連休前に、ムーディーズが日本国債の格下げを発表するのではないか、との思惑が広がっている」（外資系証券）との声が聞かれる。
ムーディーズの日本国債の格付けは、自国通貨建てがＡａ３。１段階の格下げでＡ１とシングルＡ格になるほか、２段階の格下げならＡ２となる。
ある外資系銀の関係者は、「２段階の格下げか、１段階でアウトルックがネガティブという内容は、かなりの程度、織り込まれている可能性がある。すでに海外勢の一部は、かなりポジションを落としてきているのではないか」と語る。
マーケットには格下げの影響は大きくならない、との見方がある一方で、アジア系中銀が格下げを契機にまとまった規模で日本国債を売ってくるのではないかとの観測が市場の一部で出ている。
別の外資系証券の関係者は、「シングルＡ格の国債の保有比率を引き下げざるを得ない中銀があるのは間違いない。その中で、保有残高が大きいとみられる複数のアジア系中銀が日本国債を売ってきたなら、マーケットへの影響は小さくないだろう」と推測する。
アジア系中銀の動向について、東京三菱証券・チーフ債券ストラテジストの石井純氏は、「格下げをきっかけに日本国債を売ってくる可能性はある、とみている。海外勢の中にも、そうした見方をする市場参加者がいるようだ」と語る。
また、みずほ総合研究所・主席研究員の真壁昭夫氏は、「格下げを受けて、アジア系中銀が日本国債を売却してくるだろう、との観測は確かにマーケットの一部にあるようだ。中銀は、もし、いったん売り出した場合は、売りっぱなしであるため、影響が大きいだろう」と予測する。
複数の市場筋によると、アジア系中銀の中でまとまった額を保有している中銀の保有残高を合計すると、数兆円に上るのではないか、との推計がある、という。
ある国内市場関係者は、「仮に短期間のうちにまとまって１兆円程度の売りが出た場合は、１０年最長期国債の利回りは、０．１％程度は上がる可能性がある」という。
みずほ総研の真壁氏は、「期初は残高も少ないので、国内の機関投資家の中には、格下げの影響は軽微で、価格が下がったところは絶好の押し目買いとみている向きが多い。しかし、中銀を含め、海外勢がまとまった売りを出してきた場合、なかなか手を出せない、というムードになる可能性がある」と指摘。
さらに、「格下げをきっかけに６月までに長期金利がジワジワと上がっていく展開が予想される。９月までをみれば、１．６─１．７％程度をメドに長期金利が上がる方向にあるとみている」と予測する。
ただ、マーケットの中には、格下げでどの程度の売りが海外勢から出てくるか、疑心暗鬼の声も根強い。ある邦銀関係者は、「どの程度の売りが海外勢から出てくるか、反対にどの程度の押し目買いが国内勢からみられるのか、現状ではマーケットのコンセンサスがなく、方向感を計りかねている。ただ、１兆円も売りが出てくるなら、０．１％程度の上昇はあるのではないか」と語る。
東京三菱証券の石井氏は、「中銀が売ってくるにしても、相場への影響は売却する国債の年限によるだろう。短期国債を売っても、市場に吸収されるのではないか。長期ゾーンを売ってきた場合は、相場が崩れる可能性がある。ただ、１．５％台まで長期金利が上がれば、そこで投資家の買いが予想され、金利上昇はいったん止まるとみている」と話している。
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