長期にわたる経営不振にあえいでいた家電量販店の第一家庭電器<8172>が民事再生法を申請し、事実上、破綻した。1992年以降、深刻な業績低迷が続き、上場企業として存続していることが「業界の七不思議の1つ」とまで揶揄されてきた同社だが、説明によると2001年2月期に債務超過に転落。今期も修復の見通しが立たないため、民事再生法に踏み切った。すでに死に体となっていた同社の破綻は業界、マーケットの双方にとって特段、驚くことではではないものの、一連の家電量販店業界における激しい構造変化の象徴事例であることは間違いない。
●家電量販店としての“再生”はほぼ絶望的か
第一家電の負債総額は339億円で債務超過が70数億円。同社は1992年の2月期から2002年2月期まで、10年間にわたって最終赤字を続けており、この間に財務体質は極めて脆弱化していた。昨年、ディスカウンターの新興勢力であるドン・キホーテ<7532>から出資を受けたが、数店を業態展開した程度で、支援・活性化策は進んでいなかった。
国分忠男社長は民事再生法に基づく再建にあたって「ドン・キホーテとAV・ゲームソフト販売・レンタルのゲオ<2681>から支援を仰ぎたい」としている。しかし両社の支援に対する姿勢はいま一つはっきりしておらず、第一家電の落ちるところまで落ちてしまったブランドや古い店舗フォーマットを見ても、家電量販店として再生するのはほぼ不可能と見るべきだろう。第一家電では破綻の原因をバブル期の過剰投資に求めている。過剰な投資による借入金負担により、店舗・人員への投資が減少。競争力の低下を招いたという図式で、大筋ではこの通りといっていい。ただし同社についてはM資金絡みの話が取り沙汰されたこともある。
●業界七不思議は今でも解明されていない
また破綻の会見では発行した転換社債の引き受け手が不明瞭な点について記者に質問を浴びている。現実問題として赤字体質が定着化したうえに資本の劣化が進んでいる同社の場合、市場において転換社債を発行することは不可能なのはいうまでもない。真相はともかく“七不思議”はまだ解明されていないようだ。
同社の破綻が業界に与える影響は実質的にはないといっていい。しかし大手家電量販店による老舗業者の破綻といった単純な構図だけでは図れない。なぜなら老舗業者の崩壊はメーカーの流通網の崩壊という側面をもっているからだ。
●減り続けるメーカー色濃い物流ライン
大手家電メーカーが物流・販社の構造改革に躍起になっているのは、これまで「言うことを聞いていたメーカー色の濃い業者が減少している」ことによる。寡占と肥大化が進む専門店は、自社の物流モデルを構築しているケースが多いが、このモデルにはたいがいの場合、メーカーサイドの既存物流は組み込まれない。
松下電器産業<6752>の苦境も、大胆な言い方をすればチャンネルマターといえる。同社はこれまで、数万店にのぼる系列特約店を販売力の基盤にしてきたが、こうしたチャンネル網が崩壊の一途をたどればメーカー本体に影響が及ぶのは自明のこと。技術開発が先行するのはメーカーとしてやむを得ないにせよ、生産からユーザーに商品を渡すまでのグランドデザインを描くことが製・販双方に求められている。
(山科 静)
・ヤマダ電機+ダイクマは国内流通構造の劇的な変化を予告か?
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/17/20020417162514_73.shtml
・ジンクスに立ち向かうコジマ〜苦境脱出の秘策はあるか?
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/12/20020412095011_74.shtml