欧米の3大格付け会社のうちの2社が、日本国債をダブルAの最下位に格付けたうえ、さらに引き下げを考えているという。これは、単に日本国にとって問題であるだけでなく、日本企業にとっても大問題である。なぜなら、国債の格付けはカントリーシーリングになるので、トヨタやソニーの格付けもそれ以下になってしまうからだ。
そもそも、日本国債の格付けがポルトガルやスロベニア以下で、さらにボツワナやギリシア以下になるというのは解せない。日本のような先進国の自国通貨建て国債がデフォルトする事態とは、一体どんなものなのか。外貨建て国債に至っては、まったく発行していない一方で、外貨準備が4000億ドル以上もあり、トリプルA以外ありえない。
今のところ、格付けの低下にもかかわらず、国債価格が下落する気配はなく、政府の対応も生ぬるいが、企業は大変である。カントリーシーリングにより、自社の格付けが低下し、債券の発行コストが確実に上昇するからだ。商社や銀行の中には、すでに低位の格付けがさらに引き下げられると、市場からの資金調達自体が困難になるものも出てこよう。
このように見てくると、日本の一部のマスコミや政治家が、政府批判のつもりで国債の低格付けを評価するのは、日本の企業や国民の利益を大きく損なうものだといえる。エンロン事件からも明らかなように、根拠も基準も不透明なまま格付けをもてあそぶ格付け会社に対しては、むしろ厳しく対処すべきである。そして、政府や企業は損害賠償訴訟を検討すべきである。 (知命)