日本の株式市場で約5割のシェアを持つ海外投資家。シェアの大きさゆえ、彼らの動向は常に市場関係者の注目を集める。直近で彼らが4週間連続の売り越しを記録したことから、日本勢の不安が日増しに高まっている。大口投資セクターの売り基調が更に続けば、日本株の調整局面入りが確実なためだ。
●肝を冷やした連続売り越し
東証が毎週まとめている「投資主体別売買動向」によると、海外投資家を示す「外国人」は3月第2週の623億円を皮切りに、135億円、678億円、545億円―と、直近は4週連続で売り越しを記録。新年度入りして以降、平均株価が小幅レンジ内で小浮動を続け、相場がこう着感を強めていただけに、海外勢の連続売り越しが日本人投資家の肝を冷やした。
4週連続の売り越しについては、政府が2月に空売り規制を強化したことに伴い、海外勢がショート・ポジションを急反転させたことの反動、との見方がある。実際、2月第4週、3月第1週には、計8846億円の買い越しを記録。買い戻しだけでなく、世界的な景気回復期待も高まったことで「日本も循環的な回復局面入りするとの期待買い」(国内投資信託)だったわけだ。だが、その後の売り越しの展開は「気持ちのよい話題ではない」(銀行系証券)というのが日本勢の実感。
●楽観は禁物
米国の同時多発テロ以降も、同国経済は急速な回復を遂げた。企業業績も上向き、世界的な成長が加速するとの見方が高まったのは事実だ。しかし、前週に米IBMが四半期決算の下方修正を発表したことを機に、「米国の景気回復度合いに企業業績が全くついて行っていなかったことが徐々に判明し始めた」(米系運用会社幹部)と、海外投資家の間に警戒感が台頭。「本国市場で調整機運が出始めた以上、海外市場の株式ウエートは一旦引き下げざるを得ない」(同)として、日本株が売られ始めたというのが、連続売り越しの真相だ。
加えて、このところ米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利上げ観測も後退しているため、各種金融商品への投資配分を決める大手運用会社のアロケーターたちが、「相次いで短期株売り・債券買いへのシフトを急ぎ出した」(欧州系運用会社)という。折しも今週はテキサス・インスツルメントを皮切りに、モトローラやマイクロソフト、ボーイング、シティグループなど、様々なセクターの代表企業が決算を発表するため、「株売り・債券買い」の短期ポジションは「週末にかけて膨らみそう」(先の米系)。
デフレ進行がいつ止まるか全く見えない日本経済にあっては、「米国経済と企業業績の力強い回復だけ最後の拠り所」(政府筋)であることは間違いない。仮に今週発表される米主要企業の業績が振るわなければ、海外投資家の売り越し基調は継続し、「日本政府が描く循環的な景気回復期待さえおぼつかなるなる」(先の欧州系)ことは確実。今週の米企業決算と、今後数週間の海外投資家の売買動向からは、目が離せない。
○URL
・株式相場、ナギに終止符か〜浮上する92年再現説
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/11/20020411094015_09.shtml
[相場英雄 2002/04/17 14:52]