みずほファイナンシャルグループのシステム障害は日を追うごとに実害も表面化し、みずほホールディングスの最高経営者(CEO)前田晃伸社長ら現経営陣の責任を問う声が強まっている。こうした情勢に、みずほ側は、グループの特別顧問に退いている統合前の旧3行の3頭取ら旧経営陣に詰め腹を切らせることで難局を乗り切る構え。だが、金融関係者は「現経営陣を温存したままで責任問題に決着は図れない」と厳しい見方だ。
「今回の一連の問題の責任は、準備段階の責任者である前CEOの3人にある」−。16日の会見で、山本恵朗・旧富士銀行頭取はこう話した=写真。
いまだ障害が収まらない、みずほのシステムは、旧第一勧業銀行の基幹システムを外部との窓口となるメーンシステムとして、これに接続コンピューターを介し、旧富士銀行と旧日本興業銀行の基幹システムを連結する「リレー方式」が採用されている。
平成16年の完全統合までの暫定システムなのだが、その導入に向け、旧3行間で激しい主導権争いがあり、それが混乱を招いたとの批判があった。これについて、山本氏は「自行のシステムが一番優れていると考えるのは当然」と、主導権争いがあったことを暗に認めた。
山本氏も「責任を痛感します」と前置きしたうえで、「(旧経営陣)3人の考え方は一致している」と強調。事実上、この3人が特別顧問を退任することで、現経営陣への波及を極力避ける思惑があるとみられる。
だが、金融業界や政界からは「旧経営陣に責任があるのは当たり前。これだけ混乱が拡大した要因には、現経営陣の問題認識の甘さもあった」との批判が日増しに強まっている。
というのも、みずほのシステムは、3月末の統合直前にデータ処理に遅れが出る可能性が指摘されていたことなどが明らかになっているためだ。不安を抱えたままの見切り発車に、最終的な「ゴーサイン」を出したのは前田社長ら現経営陣にほかならない。
さらに、16日の参院財政金融委員会の参考人招致で、前田社長は「今月いっぱいでほぼ正常化できる」としていたが、「1日の混乱発生後の認識の甘さで対応が後手に回り、問題解決が長引いている」(金融業界関係者)との批判もある。
みずほ側は旧経営陣のクビを差し出すことで、人身一新したばかりの現経営陣を温存したいとの意図があるのだろう。
だが、混乱による実害は日増しに増えており、現経営陣の認識の甘さと責任を問う声がさらに強まるのは必至だ。