電気やガス、電話料金といった公共料金に加え、クレジットカードの決済も滞るなど、システムダウンの後始末に追われるみずほフィナンシャルグループ<8305>。「完全復旧まであと2週間はかかる」(石坂文人専務執行役員)今回の後始末だが、システムが回復しても深刻な対応が待ち構えている。それが賠償問題だ。一部で報じられたようにすでに東京電力<9501>が賠償請求の検討を始めたが、他社でも雪崩を打って賠償を求める声が上がる可能性もある。みずほの憂鬱は当分、終わらない。
●クレジットカード会社も対応に動き出す
「今回の口座振替の遅延によりお客様にご負担をおかけすることはございません。また、信用情報に影響を及ぼすことも一切ありません」。こんな文面の封書が先週末、各家庭に郵送された。差出人はクレディセゾン<8253>の林野宏社長。毎月4日が決済日にあたるクレディだが、同社も今回のみずほ銀によるシステム障害のいわば“被害者”。この文面を意地悪く読めば、「顧客に負担はかけない。かけるとすれば銀行だ」と言い換えることもできるであろう。
●“インフラ企業”はやむを得ない措置に〜領収書を二重発行
今週に入り、システム障害による実害が次第に明らかになっている。東電は3月分の電気料金引き落とし未納額が52億円に達しているほか、領収書発行でも頭を抱えている。なぜなら、代金の引き落としが確認できないからだ。そこで東電やNTT<9432>では急きょ、代金を記載しない白紙の領収書を配布、後日みずほ銀からのデータ提供を受けた時点で改めて正式の領収書を発行する。この領収書の“二重発行”に費やすコストについては、みずほ側に請求する方針とみられる。
●最大の問題は中小企業対策
正式に東電が賠償請求に乗り出せば、「みずほ銀はそれに応じざるを得ない」とある業界関係者は断言する。そうなれば、さまざまな企業で同様の請求が持ち上がるのは想像に難くない。実際クレディセゾンが郵送した封書もクレディにとっては、予算外の費用。みずほ側が負担するのは当然の流れといえる。
しかし、この問題が根深いのは今回のトラブルによって経営危機、または破たんを招いた可能性のある中小・零細企業への対応が不可欠な点だ。東電やNTTといった優良企業では、手元流動性が一時的に悪化するが、バランスシート上では売掛債権が増加するだけで大きな問題は発生しない。しかし、キャッシュフローが少なく、この間決済ができず破たんに追い込まれている企業も必ずあるはずだ。こうした企業に対する保証をどうするか。場合によっては訴訟に発展する危険性もあり、みずほの信用力やブランドがさらに傷つくことは避けられない。みずほの憂鬱はまだまだ終わらない。むしろこれから本番を迎える。
(井原一樹 市川徹)
・「金融再生最前線」〜大再編に大暗雲・・・みずほのATM障害
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/03/20020403103510_21.shtml
・露呈した金融界の“盲点”〜みずほ障害が示すシステム軽視のツケ
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/09/20020409103016_01.shtml
・みずほ銀トラブルに影の“主役”〜最強IT3社の大失態
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/09/20020409142005_23.shtml
・「深層・真相」〜日銀当座預金残高が伝える“みずほ”と金融危機
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/10/20020410152513_09.shtml