日本銀行の速水優総裁は15日午後の定例記者会見で、みずほホールディングスのシステム障害について「預金取引、口座振替という銀行業務の根幹をなす部分で混乱を生じたわけで、たくさんの顧客に影響を与えたのは、大変遺憾だ。みずほグループには、2度とこういう事態が起こることがないよう、原因の究明を体制の整備に努めて欲しい」と述べた。
総裁は「この間、みずほ銀行と日々、密接な連絡を取りながら、銀行間の決済が円滑に進めるよう努めている。みずほ銀行に対しては、今回の件に関して、詳しい報告を求めている。今回のトラブルは、金融機関のシステムへの依存度が高まるなかで、統合をきっかけにしてそのリスクが顕現化してきたものだ。日銀ではそうしたリスクを注視しており、本年度の考査においても重点的に調査したい」としている。
監督責任については「日銀としては、決済システムの円滑な運営を図る立場から、みずほグループからシステム統合の進ちょく状況の報告を受け、不測の事態が生じた場合にも、きちんと対応するよう伝えてきた。先方からは、システム統合は予定通り進んでいるとの報告を受けてきたが、結果的に、顧客取引を中心とした被害が発生し、大きな影響を生じたことは大変遺憾だ」と述べた。
新たな不良債権発生の可能性
先週公表された金融庁による金融機関特別検査の結果については、「主要行の不良債権処理が促進されたことは評価すべきで、私どもとしても、平成13年度の決算で、主要行の自己資本比率が概ね10%を維持できたことは認識している」と述べた。
そのうえで「ただ、景気の状況や構造改革の進展を踏まえると、今後も新規の不良債権の発生や既存の不良債権のさらなる劣化が続く可能性が強いと思う。各金融機関は今回の結果を踏まえつつ、特別検査対象企業はもとより、それ以外の企業についても、経営財務状況をチェックする必要がある」と指摘した。 また「今後さらに不良債権処理を進める場合、その過程で自己資本が十分とは言えなくなる事態も想定される。システム全体の安定に疑問が呈せられる状況に陥った場合は、公的資金注入も含めて、タイミングを逸せず早めに対応することが必要だ。私どもとしては、考査等を通じて、金融機関の不良債権の処理状況、財務内容などを実態把握するとともに、金融庁と密接に連絡を取りながら、経営健全化に向けた努力を促していく」と述べた。 公的資金注入の可能性ないではない 大手行の自己資本比率が実質的に不足状態にあるとの主張を変えたのか、と問われ、「これだけ償却引き当てをしても、BIS規制の計算で10%残っているというのは、あり得ることでもあるし、これくらいなければならないと思うが、繰り延べ税金資産を5年間も延ばしていくことは、他の国ではやっていない。日本は自己資本への算出基準が最も甘い」と指摘。 そのうえで「それを考えると、このままで行けるかというと、中長期的に収益力の強化がない限り、償却していく資金がないことが一番問題であり、その考え方はまったく変わっていない。それはこれからの課題として残っている」と述べた。 さらに、金融危機対応会議を開いて公的資金を注入する可能性について問われ、「これからも、そういうことが起こる可能性がないではないが、必ず起こるというのではない。今が自己資本不足と言っているわけではないが、中長期的な課題であることは間違いない」と述べた。 景気のぜい弱な地合いが続く 景気の現状については「全体としてなお悪化を続けているが、そのテンポはやや和らいできている。前月より多少明るいと言える」と指摘。先行きについては「景気が全体として下げ止まりに向かう方向にあると考えてよいが、心配なのは、海外経済の回復テンポには不確実な要素が少なくないことと、内需の弱さを踏まえると、景気のぜい弱な地合いはまだ続くと言ってよい」と述べた。 総裁はそのうえで「こうしたなかで、内外の金融市場が不安定な動きを示すような場合には、実体経済に悪影響が及びやすい点には引き続き留意する必要があると考えている」としている。