政府主導で空売り規制を強化し大物仕手筋を摘発しても、相場がある限り株価操作はなくならない。プロばかりか一般の個人投資家の中にも、自作自演で株価を吊り上げ、ゲーム感覚で売り抜ける者もいる。その手口をみるとしたたかな一面が垣間見られる。しかし、いわゆる“仮装売買”は、それが機関であろうと個人であろうと摘発される可能性が高い。「大丈夫、見つからない」と思っているあなた・・・マークが厳しいこともお忘れなきよう。
●引け値操作は「基本中の基本」だが
証券ディーラーは引け値成立への関与が禁じられている。大引けの値段を動かすことは株価操作の基本中の基本であるためだ。ベテラン証券マンが紹介する中で最も一般的な株価操作法は「1人仕手」とも呼ばれる次の方法だ。
最初に断っておくが、以下の方法は「違法の可能性」が極めて高い。まず、特定銘柄を少しずつ買う。銘柄は日頃、出来高が少なく、週足チャートでみて下値で横ばいを続けているものを選ぶ。仕込みが完了したら、ある日、取引終了間際に成り行き買いを入れ、引け値を吊り上げる。翌日、前日終値よりさらに高い値段に売り注文を置き、別の証券会社を通じて自分で買う。
この際、買い値付近に指値買いを並べておく。新たに参加する投資家は指値が並ぶ元の買値より上で買いを入れるケースが多いから、仕掛けた株がアップトレンドに乗らなくても、本人は高い確率で売り抜けられる。追随買いが入らず、下値の買いが約定しても、もともと下値の堅い銘柄なら時間をかけて少しずつ持ち株を処分すれば損失は軽いだろう。値上がり率が大きければ、投資サイトや情報端末上の各種ランキン
グに載り、注目度が高まる。最近は大人しくなったが、数年前はディーラーが他社のディーラーと互いに連絡を取り合い、特定銘柄を集中攻撃することは珍しくなかった。
銘柄を選ぶ際、最初に注目するのは出来高と株価の変化率だ。
●仮装売買は違法
この「1人仕手」は、本人が自分の売り注文に買いをぶつけている点でも違法の可能性が極めて濃厚だ。東証は取引高が急増した銘柄、価格が急変動した銘柄、合併などの材料のあった銘柄は必ずマークしている。ネットの発達で、投資家同士が連絡を取り合って仕手筋さながらの売買ができるようになった。「同一銘柄に大量の買いを入れる複数の顧客を調べてみたらごく普通の会社員だった。支店長を通じてやんわり事情を聴いたら、こうした取引がなくなった」との証言もある。
金融庁や東証のチェック体制が強化されていることもあり、従来なら誰にも気付かれなかった少額の違法売買が、摘発の対象になるケースも出ている。機関投資家だけでなく、個人もまた「違法は違法」となることをあらためて肝に銘じていただきたい。
○URL
・金融庁が「司法取引」?〜空売り規制強化で思惑広がる
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200203/05/20020305105009_12.shtml
・浮上する「3月急落説」〜カラ売り規制が仇になる?!
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200202/28/20020228101006_03.shtml
・空売り規制をさらに強化〜出来高低下の副作用に懸念も
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200202/27/20020227165506_31.shtml
[半沢昭悟 2002/04/15 12:02]