リストラされてもアジアがある――。雇用情勢の悪化が続く中で、中国や台湾などアジア地域で再就職する中高年が増えている。製造業を中心に空洞化が進む国内を尻目にアジアでは設備投資が回復基調にあり、工場長や技術者の求人が増えているためだ。給与水準は低くなる案件が多いが、海を渡って新天地を目指す中高年にビジネスチャンスを見いだす人材紹介会社も出てきた。
今春、中国・上海にある日系繊維会社の所長に再就職した軽部拓郎さん(仮名、58)は、大手総合商社で繊維の営業を30年以上務めたベテラン。繊維不況でかつての会社が提示した希望退職に応じ、年収が450万円と半分以下に激減するのを覚悟で再就職を決めた。家族を残しての渡海だが、「人生はやりがいですから」と笑う。
香港で人材紹介業務を手がけるパヒューマアジアグループが昨年1年間に日本からアジアに送り出した人材は前年の1割増の約500人。このうち4割が工場管理者や専門技術者で、その多くは30歳代後半から50歳代という。