経済産業省は、製造技術やノウハウ、顧客名簿といった企業秘密を不正に取得、競争他社に流出させる「産業スパイ」行為などに対し、懲役刑をはじめ刑事罰を科す方向で検討に入った。
6月にも経産相の諮問機関である産業構造審議会・知的財産政策部会を立ち上げて細部を詰め、来年の通常国会で不正競争防止法の改正案提出を目指す。
同省は企業秘密の保護策を欧米先進国並みに強化することで、日本企業の競争力の向上につなげたい考えだ。
現行の不正競争防止法は、窃取、詐欺などの不正な手段で営業秘密を取得、使用することを禁じている。だがこうした行為に対しては、損害を賠償することを定めているだけで、刑事上の罰則がない。
そのため、秘密情報が記録されたフロッピーディスクを持ち出したケースでは、数十円の価値しかないディスク自体の窃盗罪としてしか立件できず、産業スパイ行為はいわば「野放し状態」(同省幹部)となっている。
こうした法規制の不十分を背景に、欧米企業に比べて日本企業から機密情報を入手することは容易だとされてきた。
現行法は他人の商標を盗用したような場合には、3年以下の懲役か300万円以下の罰金を定めており、産業スパイ行為などにも同様の罰則を科す方向で検討する。
欧米先進国は産業スパイへの刑事罰を設定。米国は経済スパイ法(1996年成立)に違反したとして、昨年に遺伝子技術の分野で日本人研究者を起訴した。ドイツは不正競争防止法、フランスは知的財産法典で刑事罰を設けている。