ソニー生命が外資傘下に収まる公算となってきた。全額を出資するソニーが、保有株式の大半を売却する方向で最終調整に入っており、売却先には複数の候補が上がっているが、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の子会社で世界最大のノンバンク、GEキャピタルが最有力。国内生保に比べてずば抜けて高い健全性などを武器に勢力を拡大しそうで、生保離れの著しい生保業界も再編に一石を投じそうだ。
ソニー生命は、男性営業職員が客のニーズに応じて商品を調合する“コンサルティング型営業”がウリ。画一的な商品を女性営業職員が販売する従来スタイルとの違いがウケて、平成13年は9月末の保有契約高は22兆4992億円と、前年同期比12.2%増を達成した。
生保不安の中、消費者が加入生保を決めるときの判断材料として注目度が高くなっている指標、ソルベンシーマージン比率(保険金支払い余力)も1674.7%で、業界トップクラス。国内生保としてはトップクラスの健全性で、業界最大手でもある日本生命と比べても3倍以上ある。いわば“超優良生保”だ。
それをソニーが手放す理由は、ソニーの金融事業戦略が、ソニー生命の現状と異なるからだ。
ソニーは現在、金融事業を人件費負担などが軽いインターネット業務に特化する方向で検討中。実際、ソニー銀行、ソニー損保はネットに集約している。しかしソニー生命には、コンサルティングのための男性営業員が4400人在籍。これが“ネット特化”と食い違うというのだ。
また業界内にはソニー生命ビジネスの頭打ちを予測する声もあり、これも売却の判断材料になったとみられる。
ソニーはソニー生命売却後、ネット特化の新会社を設立の方針という。
売却先候補は、GEグループのほか、米大手保険のプルデンシャルグループとオランダのエイゴングループ。ただ、GEキャピタルは、発行済みソニー生命株の80−100%を買い取ることを前提に折衝中で、圧倒的に優位という。今後、売却する株式の比率やのれん代を含めた譲渡金額などを詰める。
GEキャピタルは平成10年2月に東邦生命保険と提携してGEエジソン生命保険を設立して国内で生保業務を展開している。11年に東邦生命が破綻すると、GEエジソンが受け皿となり、全契約を引き継いだ。
さらにGEエジソン生命は今年2月、中堅生保のセゾン生命の買収も発表。3月上旬には、GEキャピタルのマイケル・ニール社長が来日し、「日本での事業規模はまだ小さい。今後も買収や提携はありえる」と買収を示唆していた。
GEキャピタルがソニー生命を傘下に収めれば、日本での保有契約高は約35兆円と、生保業界8位の大同生命保険に匹敵する。すでに米プルデンシャル、AIG、仏アクサなどが“家計リストラ”や生保不安などによる生保見直しの機運に乗って勢力を拡大中だが、ソニー生命の外資傘下入りで業界全体を刺激し、再編の引き金となる可能性もある。
ただ、ソニー生命内には依然として“ソニーブランド”から離れることへの抵も強い。このため当初の出資比率を低く抑えたうえで、その後株式を買い増すことや、社名も当初5年間は「ソニー」を残すといった案も検討中という。
GEキャピタル 米ゼネラル・エレクトリック傘下にある世界最大の金融サービス企業。個人向けローン、生命保険、損害保険などを手がける。2001年の最終利益は54億ドルで、GEグループの約4割を稼ぐ。保険事業は子会社のGEファイナンシャル・アシュアランスで行い、保有契約高では全米9位。
ソニー生命保険 昭和54年、ソニーと米プルデンシャルグループとの合弁会社として発足。62年に分離しソニーの100%子会社に。平成13年9月末の保有契約高は22兆4992億円。基礎利益は189億円。ソルベンシーマージン(保険金支払い能力)比率は1674.7%。