(回答先: 不良債権処理、7兆8300億円=東京三菱銀除き最終赤字−大手行3月期決算(時事通信) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 4 月 12 日 21:01:29)
柳沢伯夫金融相は12日夕、記者会見し、大手13行に実施した「特別検査」の結果を公表した。大口債務者に焦点を当て、株価や格付けなどが短期間で著しく悪化した企業向け債権の自己査定を厳格化した結果、特別検査の影響による処理損は総額で1.9兆円に達する見込み。また、大手行の2002年3月期の不良債権処理損は昨年11月の決算発表時に見込んでいた6.4兆円より1.4兆円膨らみ、総額で7.8兆円に拡大する見通しとなった。
ただ、今回の特別検査の結果を受けても、大手行の自己資本比率は、国際基準行で10%台前半から11%半ば、国内基準行で8%台半ばから10%台半ばを維持するとしている。ただ、昨年の中間決算発表時に予想していた水準よりは平均で1%程度、低下するが、資本不足に陥る銀行はないため、金融相は「現時点で公的資金の注入は必要ない」との見解を維持した。
米国の格付け機関であるS&Pは同日夕、特別検査の結果を受けて、「銀行格付け上、一定の評価はするものの、低下していた邦銀の信認をこれだけで回復するのは困難であるとの見解を発表した。ただ、足元の業績予想修正は格付けに影響しないとした。
半数の貸出先の債務者区分が悪化
昨年の10月下旬から今年の3月末までの間に行われた特別検査は149の貸出先(対象の貸出債権は12.9兆円)について、債務者区分や引き当て、償却を見直した。149の貸出先のうち、約半数の71の貸出先(対象債権は7.5兆円)は債務者区分が悪化。このうち、破たん懸念先以下と判断されたのは、34の貸出先(対象債権は3.7兆円)だった。
特別検査を契機に、引き当てや償却の上積みが必要となった処理損は総額で1.9兆円となった。一方、銀行の決算予想では1.4兆円の増額だが、この数字の違いはは、昨年11月末時点で、見込まれていた6.4兆円の不良債権処理損に、すでに1.5兆円が「特別検査分」として、織り込まれていたことがまず、挙げられる。
しかし、実際に金融庁が特別検査に入った結果、銀行は新たに0.4兆円の不良債権処理を余儀なくされ、計1.9兆円の増加となった。確かに、決算上は下期で1.4兆円増えたことになるが、「特別検査の結果を踏まえた不良債権処理損の増加分」という意味では、1.9兆円が実質的な数字といえる。
また、149のうち、7割近い98の貸出先(対象債権は10.5兆円)は、流通、ゼネコン、不動産、ノンバンク の4業種で、これら4業種向けの追加損失は1.7 兆円だった。
「特別検査はやむを得なかった」
不良債権処理損が7.8兆円と2001年3月期の4兆円台に比べ大きく増えたことについて金融相は「第2のヤマ。その後は正常化させ、不良債権残高は減っていくだろう」との見通しを示した。特別検査を契機に、破たんした企業が出たことは認めつつも、「銀行がしっかり自己査定をしてくれたので、小泉(純一郎)総理の要請に応えることができたと思う」と述べ、不良債権処理が進み金融庁の信頼回復につながった、と評価した。
一方で、「事後チェック型の検査という本来の姿からすれば、リアルタイムで、市場の評価を織り込んだ検査というのは、きわめて例外的だということは認める」と述べた。
激変する市場環境への対応に翻ろうされたこの半年を振り返って、金融相はマイカルの破たんを例に引きつつ、「市場の評価を受けて、企業が破たんするということを、もう、この目の前で見せつけられた」。さらに「償却と引き当ての適格性を確保するため、特別検査はやむを得ない措置だった」として、金融行政が一大転換を余儀なくされたことを認めた。
破たん懸念先以下「2年以内に8割処理」
金融相は、不良債権処理をさらに加速させるための「新たな指針」を同時に発表、これまで新規発生の不良債権処理は3年以内などとしていたのを、1)破たん懸念先以下は1年以内に半減、2)同様に、2年以内に8割を処理―― など、処理の政策目標年限を前倒しする考えを示した。
また、こうした政府方針が着実に実行されるのを確認するため、主要銀行グループ別に検査部門を再編成する方針も明らかにした。各部門が1年を通じて同一グループ内の金融機関を継続的に検査する「専属の担任制」を敷く。これにより、検査官を大手行に常駐させるのと実質的に同じ効果が得られるのを期待するという。
さらに、特に内部監査体制などを重点的に検証するため、民間の専門家を登用した専門家が各グループを横断的に検査する。そのほか、地域金融機関の再編が後れていることから、合併を促進させる政策を早急に検討する方針も明確にした。
HSBC証券調査部シニアアナリストの野崎浩成氏は「検査体制の強化は評価できる」としたうえで、その理由について「いままで検査は静態的だった。常駐の検査官を置くなど、動態的な検査ができるという意味では、より実態をつかむことができる」と指摘した。