中国は、欧米資本による大型の石油化学設備ヘの新規投資を多数計画しているほか、すでに一部では建設が始まっている。また、稼動中のプラントにも最近完成した設備が多く、必然的に償却前設備を多く抱えている中国は、かつてわが国が経験した第一次石油ショック並の深刻なコスト上昇に見舞われる可能性が否定できない。「いざとなれば、石油や膨大な埋蔵量を持つ石炭があるからわが国のケースのようにはならない」という見方もあるといえばあるのだが・・・。
●日本石化復活のポイントは中国の動向次第
しかし、中国の新設エチレン設備は多くが石油精製とのセットで建設されており、日本の設備体系と似通っている点にも注目すべきだろう。このため原油価格の高騰は、ナフサ依存度の高い価格構造に深刻な打撃を与えることが避けられない。したがって石油価格の高騰が、中国からの石油化学品輸出価格を大幅に押し上げる結果を招くことは間違いない。
この数年大型設備投資をしてこなかった、もしくはしようと思ってもできなかった日本の化学メーカーにとって、それがケガの功名になる可能性がある。それは、抱えている大半の設備が償却済みであり、固定費負担が少ないわが国のコスト競争力が必然的に高まることにつながるからだ。
原油価格が、今後どのような推移をたどるのかは米国が本当にイラクを攻撃するのか、仮にそれが行われるとして「いつ」、「どのような」形になるのか次第。イラクへの攻撃そのものが中東の政治情勢を大きく変えるだけに、湾岸戦争やスエズ動乱などとは次元を異にした極端な石油需給の変化を引き起こす可能性が否定できない。
また、中国は日本や欧米と異なり適正な原油備蓄を保有していないことが予想されるため、原油価格高騰の影響はより大きものになりかねない。
●品質面で抜きん出る日本メーカー
アジアの石油化学品市場は、かつては日本を主体に一部、欧米資本や台湾、韓国資本で市場を分け合っていた。そのなかでわが国の化学企業は当初から品質面では抜きん出ており、新興中国にも大きな格差をつけている有利さがある。そういった理由から原油価格の高騰は、逆に三菱化学<4010>や住友化学<4005>、三井化学<4183>などがアジアでの相対的強さを発揮する「チャンス」として働くことも否定できない。原油価格の高騰が、わが国化学メーカーにとって思わぬ復活のきっかけになる可能性も出てきそうだ。
(伴有 亮太郎)
・ケガの巧名なるか石油化学〜中東緊迫で原油高騰<上>
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/10/20020410095015_85.shtml
・対岸の火事では済まない?〜中東緊迫で日本株にも暗雲
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/03/20020403143518_23.shtml