税制の抜本改革をめざす財務省は、配偶者や子どもがいる場合などに所得税の負担を軽減する各種控除制度を、全面的に見直す方向で検討に入った。サラリーマンの夫と専業主婦の妻、子ども2人のいわゆる「標準世帯」の税制優遇を見直すほか、サラリーマンの多くが税務署で所得税を申告できる制度に改めることも検討する。政府税制調査会(首相の諮問機関)で論議し、6月の中間報告に盛る考え。ただ、最終的に増税につながる可能性が高く、反発も予想される。
政府税調の地方公聴会などを通じて、「広く薄い負担」について国民の理解が得られつつあると判断した。
サラリーマンの所得税は、配偶者、子ども、高齢者など扶養家族に応じて、課税対象となる所得を減らして納税額を軽くしている。さらに、国民共通の基礎控除(38万円)のほか、経費見合いの給与所得控除(最低65万円)などもあり、「標準世帯」の課税最低限は先進国で最高水準の384万円に達している。就業者のうち4人に1人が税金を払っていないといわれる。
政府税調は今月中に数回開く小委員会で所得控除のあり方を議論する。
税負担を軽くする一方で女性の社会進出を妨げているとの批判がある配偶者控除(38万円)を廃止したうえで、子どもや高齢者の扶養控除などと一体化させる案のほか、20歳以上の子どもを扶養の対象外にしたり、高齢者の扶養控除の対象年齢を引き上げたりすることが検討される見通し。
金額の大きい給与所得控除の圧縮も検討。この結果、課税最低限は引き下げられ、税率が据え置かれると増税になる。
財務省は「標準世帯」が納税者の実態に合わなくなったと判断。子ども1人や共働き、単身など、優遇度合いが低い世帯の税負担の現状を分析・紹介することで、控除制度の変更に理解を求める考えだ。
同時に、会社を通して納税する「年末調整」ではなく、サラリーマンの経費の実額控除を促すために確定申告制度を拡充することも議論する。
所得税は戦後ほぼ一貫して控除を拡大して負担を軽減する方向で見直され、税収増は近年、消費税を軸とする傾向が定着している。今回の税制改革で、所得税の控除制度が大きく改廃されれば抜本的な方向転換となる。