経済産業省は10日、世界的な会計基準作りを進めている国際会計基準審議会(IASB)が年内にも草案をまとめる新会計基準について、投資家の的確な判断を妨げる恐れがあるなどとして、IASBに草案の修正を求める方針を明らかにした。経団連とともに国内外の投資家などの意見を集約した上で、欧州連合(EU)とも連携を取りながら、IASBに変更を迫る。
IASBは、世界の企業を同じ尺度で比較できるような会計基準作りを進めている国際的な民間組織だ。IASBがまとめた基準を日本の金融庁など各国の政府機関で組織する証券監督者国際機構(IOSCO)が承認すれば、各国の会計制度に反映されるため、強い影響力を持つ。
経産省が問題視しているのは、新基準に盛り込まれる企業の損益計算書の見直しだ。現在の日本の損益計算書では、本業の儲(もう)けを示す「営業損益」や、金融収支などを示す「営業外損益」とは別に、リストラなどに伴う固定資産の売却損益などを示す「特別損益」という項目を設けている。IASBは「特別損益に何を計上するかの基準が明確でなく不透明」として、特別損益の項目の廃止を検討している。
特別損益がなくなると、本業の儲けと、リストラなどを行った結果、生まれた土地や建物の売却損益の区別がつきにくくなり、経産省は「投資家が会社の業績を的確に判断できない恐れがある」としている。
また、IASBは、企業間で持ち合う株式について、全面的に時価評価で損益計算書に反映させる方向で検討しているが、経産省は「短期的に売買しない持ち合い株を、時価で損益計算書に反映させれば、毎年の業績が大きく変動し、投資家を惑わせる」などとしている。