最近の外為市場では、ポジション調整の影響を受けて、ドル/円が軟調な展開となっている。目先は、中東情勢の緊迫化などを材料に128円近辺まで売り込まれるとの見方が浮上している。ただ、日米のファンダメンタルズ格差などから積極的な円買いも難しく、いったんは円高に振れても、130〜133円のコアレンジでのもみあいを見込む声が多くなっている。
市場では、ドルの上値の重さが認識され、週初に131円台で推移していたドル/円は、不安定な中東情勢や米企業業績などを材料にポジション調整が進んだ。10日午後の取引では一時、130.20円まで下落した。
市場では、「日本のファンダメンタルズを考えると円買いはできないと市場の誰もが認識している」(都銀)との声が少なくないが、「現在の相場は、材料不足との感が否めないものの、これだけ上値の重さが確認されると、ドル買いがあまり出てくる感じではない。また、ドルロングが解消されてきているものの、短期筋などは、依然としてやや、ドルロング/円ショート気味で、近いうちに130円割れの局面があってもおかしくない」(信託銀)との声も少なくない。
調整がしばらく続くとみられるなか、関係者の間では、128円程度までのオーバーシュートもありうるとの声が聞かれる。
現在のドル/円の状況について、バンク・オブ・アメリカ為替資金部バイスプレジデントの高橋哲也氏は、「基本的には、新年度明けの本邦投資家による外貨建て資産投資をにらみ、先回りをしてドルの買い持ちを行っていた向きの損切りが中心。そうした中、中東情勢が不透明となり、ドルは円以外の通貨に対しても軟調になった」との見方を示している。
また、野村証券・金融市場部為替課課長の鳥屋原隆氏は、「現状は中東情勢などを材料に売買が行われる状況。円安方向への材料も不足がちで、しばらく135円は遠くなった感じ。目先は130〜133円をコアレンジに下方向にオーバーシュートしても2円程度で、往ったり来たりを繰り返し、次の一手を待っている状態だ」と分析している。
ただ、鳥屋原氏は、「最近、活発化してきている個人投資家の外貨建て資産への投資が、中長期的にはボディーブローのように効いてくる可能性がある」とも話している。
このほか、市場の一部では、「125円台までドル安/円高が進むリスクはある」(前出の都銀)との声も出ている。
一方で、市場関係者の間からは、「もうそろそろ調整も一巡するのではないか」(外資系銀行)との声も聞かれるが、依然としてドル/円の上値は重く、積極的なドル高/円安方向には進みにくいとの見方も聞かれている。
ステート・ストリート銀行・金融市場部部長の小林和成氏は、「本邦投資家が外貨建て資産に期初すぐに投資するのではないか、との期待が大きすぎた。ユーロ/円、ドル/円の高値を追うほどの外貨建て資産への投資がらみの買い圧力がそれほどない状況だ。ただ、日本の株式・債券市場に対して強気のところは少なく、ある程度ドル/円が下がったところでは、外債投資などの動きが出る可能性がある」と話している。
また、小林氏によると、「新規投資が動き出すのは、6月に入ってからの方が多いため、それまでは上値の重い展開で、125円というリスクがあってもおかしくない。ただ、日本の政策当局は、130〜135円レンジを望んでいる印象で、130円割れに進むと、ある程度口先介入とみられる発言が出るのではないか」という。