4月1日の発足と同時に大規模なシステム障害が発生したみずほ銀行。同行を傘下に収めるみずほホールディングス<8305>の前田社長は9日、衆院財務金融委員会(財金委)への参考人招致を余儀なくされた。前田社長は同委員会とその後の記者会見で、業務が正常化するまで、さらに1週間の猶予が必要との見通しを明らかにしたが、度重なるトラブルに信頼は低下している。10日は金融庁が銀行法に則って報告を求めている期限。同庁は「報告を見た上で処分を検討」(柳沢担当相)とするが、同庁関係者らからは「処分は、業務停止命令にまで及ぶ可能性も出てきた」との指摘さえ出始めた。
みずほグループの今後の焦点は、システムの早期復旧とともに、金融庁が下す処分内容に移ってきた。同庁は10日を期限に銀行法24条に基づいた文書による報告を求めており、それを踏まえた上で、処分を行う。柳沢担当相は会見で「(業務改善命令が)念頭にないことはない」と語っているが、「政府首脳が厳しい措置を望んでおり、一部業務停止命令さえ視野に入ってきた」(金融庁関係者)との指摘も出てきている。ただ、業務停止命令となると銀行業務そのものに影響が出るため、同関係者によると、実務には影響が出ない持ち株会社であるホールディングスに対する命令の可能性があるという。また、金融庁としても、自らが統合の認可を行っただけに、重い処分を下すことで自らの責任問題に波及するのを避けたいとする思惑もあり、処分の内容は流動的だ。
前田社長が公の場所に登場したのは、4月1日のトラブル発生以降、9日の財金委が初めて。同委員会では各委員からの厳しい質問を受け、度々陳謝する場面に追い込まれた。その後、午後7時に開いた会見も相次ぐ質問攻勢で、2時間に及ぶロングランとなった。
前田社長が財金委や会見で行った説明によると、8日に再発した障害のうち、ATMの障害は、リレーコンピュータの不具合によるもの。二重引き落としも一度は解消したものの、口座振替作業の一部を手作業で進めていたため、その過程でミスが生じ、「人災的要素が強い」(前田社長)という。
さまざまな障害のうち、最も重大なのが口座振替業務の遅延だ。9日段階で15万件が未処理となっていたが、原因は引き落とし依頼先企業から持ち込まれるデータを読み取る際に発生するエラー。未処理分の解消は、手作業で進めて今週いっぱいかかるという。しかし、引き落とし依頼先企業にデータを還元するなど、一貫した処理を安定的に行う状態に戻すには来週前半までかかる、と説明してる。さらに、システムを安定的に運用する完全復旧には4月下旬まで掛かるとした。
前田社長は、最終チェックとなる運用テストを開始したのは昨年12月と説明したが、ある金融庁幹部は「始める時期が遅すぎたのではないか」と指摘する。同幹部によると、運用テストは通常6カ月前からスタートし、最終チェックを入念に行うという。ただ、会見などで前田社長は「3月に行った最終テストで不具合が発見されなかった。これが逆に災いした」と話している。