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日本銀行の政策委員会・金融政策決定会合が10日午後２時ごろから２日間の日程で始まった。「日銀当座預金残高が 10−15兆円程度となるよう金融市場調節を行う」とした金融調節方針は据え置かれる見通し｡年度末対応になっていた“なお書き”は再び微修正されることになりそうだ。
１日発表された日銀の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業の景況感の悪化に歯止めがかかり、景気が底入れを探りつつあることを示した｡中小企業は非製造業中心に依然、厳しい状況が続いているが、予想よりも早い海外景気の立ち上がりや、為替相場の円安、在庫調整の進ちょくで、景気は最悪期を脱したもようだ。日経平均株価も１万1000円台を維持しており、金融政策への風圧も和らいでいる｡景気の情勢判断も、修正されても小幅にとどまる見込みだ｡
一方、「当面、年度末に向けて金融市場の安定確保に万全を期すため、日銀当座預金残高目標にかかわらず、流動性需要の増大に応じ、一層潤沢な資金供給を行う」とした“なお書き”は、今回の会合で書き換えられる見通しだ｡金融政策の今後の焦点は、当座預金残高の維持に移る。ペイオフ解禁後の市場が落ち着きを取り戻し、景気の底打ち観測から株価が底堅く推移すれば、信用不安から増大した資金需要が減り、15兆円の維持が困難になることが予想される｡
合意の反故はご都合主義
金融市場調節方針には明記されてないが、政策委員会は「可能な範囲でレンジの上の方を目指す」(２月７、８日決定会合)ことで概ね一致しており、２月末の会合で長期国債買い入れ額を月8000億円から１兆円に増額したのも、これに基づいている。田谷禎三審議委員は３月６日の会見で「なるべく目標レンジの高いところを目指すためには、できる範囲で短期オペを軽減するのが望ましいという判断のもとで増額した」と述べている｡
だとすると、資金需要が減ったからといって、10−15兆円の上限を目指す合意を反故（ほご）にするのは“ご都合主義”との批判を免れない｡速水優総裁も２月28日の決定を「非常に大きな緩和だ」と胸を張っており、上限を維持できなければ金融緩和の後退とみられても仕方がない。“鬼の居ぬ間に洗濯”ではないが、量的緩和の急先鋒だった中原伸之前委員が退任したとたん、量的緩和の度合いを薄めることになれば、政策委員会の節操が問われることにもなる｡
日銀にとって助け舟となりそうなのが、長期国債保有残高の上限としている日銀券発行残高の急増だ。上限がかさ上げされる分、長期国債を買い増す余地も増えている｡ただ、日銀券の急増はペイオフ解禁による信用不安の高まりが主因とみられており、それを良いことに長期国債買い入れ額を増額するというのも、本末転倒の感を否めない｡上限が広がったからといって、安易に国債買い入れを増やせば、何のための上限かが問われることになりそうだ｡
この１年は“人事の年”
いずれにせよ、つじつま合わせの量的緩和策のほころびを縫い合わせる作業が必要になってくるが、ここまでは、あくまで短期的な課題だ｡景気は最悪期を脱したとはいえ、雇用・所得環境の悪化で、消費の低迷が当面続くことは避けられない｡短観によると、今年度の設備投資は前年度を大きく下回る見込みで、最終需要は消費、設備投資とも目先、回復は望めそうにない。遅かれ早かれ景気が底を打ったとしても、輸出依存型のぜい弱な回復になる公算が大きい｡
空売り規制によって底上げされた株価も、いつまた逆回転しないとも限らない｡中期的にみた場合、当座預金残高目標10−15兆円の現状維持でしのげると考えるのは、楽観的過ぎるだろう｡さらに、日銀にとってこの１年は、速水総裁、藤原作弥、山口泰両副総裁、３人の理事が交代する“人事の年”。その意味で、福間年勝、春英彦両審議委員がお披露目となる今回の決定会合で、どのようなスタンスを取るかも注目されよう｡
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。